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[日記/2011/January]

幻魔大戦という作品とそのまわりの事情について / 2011-01-06 (木)

新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
(この記事が2011年初の記事ですので、年始のあいさつをさせていただきました。)

今年は、私の持論である涼宮ハルヒシリーズがSF作家・平井和正の小説版幻魔大戦の影響を受けた作品であることをわかりやすく伝えていきたいと思っています。現在この辺に関する記事は、何のネタでもつっこめる「無駄知識シリーズ」に入っていますが、これからはこの件に関して新しいシリーズ記事を作ろうと思っています。(作成後にここの部分にシリーズ一覧へのリンクを入れる予定です。)

1983年にアニメ化されたこともあり、幻魔大戦はシリーズの小説をあわせて40巻ほど・2000万部が発行された人気シリーズです。ただ、1990年頃には作家と出版社のもめ事の影響もあり書店から消えています。後に集英社文庫で1999年に刊行されますが、これも1年たたないうちに多くの書店から消えました。
ですから、涼宮ハルヒシリーズのファンの多くは、幻魔大戦という作品をご存じないと思います。(私自身も、幻魔大戦という作品に触れたのは発表当時のことではなく、後になってからのことです。)

ですから、本記事で「幻魔大戦という作品とそのまわりの事情について」まとめて記載することとします。これを読んで頂くことで、幻魔大戦を知らない方でも、私が今後書いていく記事について、ある程度はわかっていただけるようにしたいと思っています。

幻魔大戦シリーズ一覧

まずはシリーズ一覧を記載します。

  • マンガ版幻魔大戦 初出1967年
  • 新幻魔大戦 マンガ版は初出1971年-1974年。小説版は1978年に初単行本化。
  • 小説版幻魔大戦 初出1979年-1983年(マンガ版幻魔大戦を改めて小説化したはずが、途中から独自のストーリーへ発展)
  • 真幻魔大戦 初出1979年-1984年(新たなメインストーリー)
  • ハルマゲドンの少女 初出1983年-1984年(小説版幻魔大戦と真幻魔大戦の架け橋か)
  • ハルマゲドン―第二次幻魔大戦 初出1987年(小説版幻魔大戦の続き)

ここには、平井和正が関わっているシリーズのみをリストします。また、涼宮ハルヒシリーズ刊行後の作品は除きます。

マンガ版幻魔大戦

幻魔大戦は、1967年(昭和42年)に平井和正と漫画家・石ノ森章太郎の共作で週刊少年マガジンに連載されたマンガが始めになります。高校生の主人公・東丈を始めとする超能力者が宇宙から迫る敵「幻魔」と戦うというSFマンガだったのですが、この連載は人類の敗北を暗示したところで終了しました。
実のところ、打ちきりが決定したため無理矢理話を終わらせたことが上記のような結末になった原因とのことです。ただ、単行本後に人気が出て、続編が読者から要望されるようになりました。

新幻魔大戦

その声を受けて1971年(昭和46年)-1974年(昭和49年)にかけて平井と石ノ森が共作したのが、「新幻魔大戦」です。上記連載とは平行世界の関係にある別世界の江戸時代を舞台に、幻魔に対抗できる超能力者の一族を作る事を目指していくことになりますが、未完のまま中断されます。
小説版(1冊)とマンガ版がありますが、内容はほぼ同様です。

GLA

平井和正は、1976年頃から宗教団体GLAに関わるようになります。
後には9ヶ月間をGLAの2代目主宰となった高橋佳子の側近として過ごし、高橋佳子名義の著作を3冊書き上げた(教団側によれば編集協力した)後、1978年夏に教団から離脱することになります。

平井和正は、GLAに関わるようになった1976年以降、書く小説に教団教義の影響が出てくるようになります。それは教団を離脱した1978年以後も続き、平井の書く作品が教義の影響からも離れるのは1990年以降のことになります。

幻魔大戦シリーズ再開

平井と石ノ森は、1978年にお互い独自に「幻魔大戦シリーズ」を執筆していくことで合意します。
これ以後、石ノ森はマンガで、平井は小説で、それぞれ単独で「幻魔大戦シリーズ」の作品を作りました。本記事では、以後平井の小説を中心に追っていきます。

真幻魔大戦

1979年から、平井は単独で「真幻魔大戦」を発表します。
マンガ版幻魔大戦の平行世界とおぼしき世界、1979年を起点として、作家・超常現象研究家となった29歳の東丈を主人公に据えて物語が展開していくことになります。
新書で15冊、文庫で18冊出版したところで中断しました。

小説版幻魔大戦

平井は同じく1979年から角川書店「野性時代」に「幻魔大戦」の連載を開始します。これは、マンガ版幻魔大戦を小説化する意図で連載が開始されたため、マンガ版幻魔大戦と同じく1967年の時点を起点として、高校生である17歳の東丈を始めとする超能力者が、宇宙から迫る敵「幻魔」と戦うところから始まります。
角川文庫版3巻途中までは、概ねマンガ版幻魔大戦をリライトしたような内容ですが、その後は独自の展開となり、20巻まで刊行され中断します。そのため、この作品もマンガ版幻魔大戦の平行世界を書いた小説であると解釈出来るでしょう。

アニメーション映画「幻魔大戦」

1983年には、アニメーション映画「幻魔大戦」が公開されました。こちらは、角川文庫「幻魔大戦」1-3巻・マンガ版幻魔大戦の展開を元にしつつ、オリジナルのエンディングを作成して、一つの作品として完結するようになっています。
平井は小説の執筆を優先するために、映画の脚本等については基本的にはノータッチを貫いたようです。

映画公開時には「ハルマゲドン接近」と言うキャッチコピーが使用されました。また、本作は公開時に「角川映画初のアニメーション」としても宣伝されています。

ハルマゲドンの少女

1983年-1984年に発表され、新書で3冊が刊行されました。
内容的には、小説版幻魔大戦と真幻魔大戦では触れられていなかった部分を触れていく形で、この2作の架け橋と捉えることが出来ると思います。

ハルマゲドン―第二次幻魔大戦

小説版幻魔大戦の続編として、1987年に発表された作品です。始めはハードカバー1冊として刊行されました。(徳間書店から刊行された幻魔大戦愛蔵版の8冊目として刊行されました。残りの7冊には、小説版幻魔大戦20巻と初公開のマンガ版幻魔大戦の原作小説が収録されています。)
後に、3冊の新書として刊行されました。

その後に刊行された幻魔大戦シリーズ

上記の後、長らく続編等は発表されていませんでしたが、2005年には「幻魔大戦deep」、2008年には「幻魔大戦deepトルテック」が刊行されます。1987年までの作品とはさらに別の平行世界で東丈やそのまわりの人物が事件に巻き込まれていきます。

また、2004年にe文庫より刊行された「地球樹の女神-最終版-」に収録された「その日の午後、砲台山で」では、幻魔大戦の登場人物が出てきます。

ただ、2004年以降に刊行された幻魔大戦シリーズは、20年近く経過した後に書かれていること、平井がGLAの教義の影響下から外れたこともあり、ずいぶん違う趣の作品となっています。
また、2003年に初版が刊行された涼宮ハルヒの憂鬱(小説)に、2004年以降に刊行された幻魔大戦シリーズの影響がないことは時期からして確実ですし、それ以降の涼宮ハルヒシリーズ作品を見ても影響はないようですので、以後当サイトで涼宮ハルヒシリーズと幻魔大戦シリーズの関連について言及する場合は、特に必要な事情がない限り、2004年以降に刊行された幻魔大戦シリーズについては考慮しません。

あれやこれやの影響について

1980年代に幻魔大戦を読んだ人の中には、作品そのものや作中で提示される宗教的な教えに心酔し、GLAなどの宗教団体に加入した人もいたようです。(SF小説家の佐々木君紀がそのような経緯でGLAに入会したと表明していました。なお、後に退会されたそうです。)
宗教に惹かれるタイプの人は、幻魔大戦を読まない方がよいかも知れません。

宗教団体であるGLA自体は信者の多い組織ではないものの、GLAが後の新宗教界隈に与えた影響は大きく、分派や、分派ではなくとも間接的に影響を与えた団体が複数存在します。
GLAの教義の影響を受けた団体は何団体かありますが、著名なところでは宗教団体幸福の科学があります。「幸福の科学」ご本尊の名前「エル・カンターレ」自体がGLAの影響を受けた名称ですし、偉大な霊魂が高次元霊であるとする発想(例:エル・カンターレは九次元霊)も、エル・カンターレが九次元霊であること自体もGLAの影響です。

この記事を書くのに参考にしたもの

e文庫 幻魔大戦コーナーにある「幻魔大戦1 幻魔宇宙(立ち読み版)」内の「平井和正『幻魔』を考える PART1 救世主はどこにいる」
今、なぜ「幻魔大戦」なのだ?
H.K ヒストリー
ヒライストライブラリー
wikipediaの記事たち。
その他、平井和正があちこちに書いていた事の記憶とか。

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