当サイトのbookカテゴリ15冊目は、坂本慎一著の「ラジオの戦争責任」です。(現時点でwikipediaに「坂本慎一」の項目がないようなので、記事を書いた時点でのgoogle1位サイトへリンクします。2016/2/21にリンク先のみ修正済み。)
図書館で戦前の有線放送に関する資料を探していた時に目にした本です。実のところ、私は放送・有線放送のハード的な面に注目しており、その意味では目的外の本のようでしたが、それはそれで興味のある話題だったので借りてきました。
戦争責任と言えばそれを巡って色々議論されているわけであり、この前に橋下知事が 「もっと言えば、朝日新聞には戦争責任だってある」と言ったように、新聞社の戦争責任についても時折指摘されることがあります。
しかし、今までラジオについて戦争責任を問う声を聞いたことがほとんど無かったこともあり、その意味では新鮮でした。
本書では、はじめの方で戦前におけるラジオの影響力の大きさが強調されています。ラジオを普及させた文脈で松下幸之助について記載があるところは、本書の出版社がPHP研究所であることを考えると微笑するべきところか。
当時はラジオ局が日本放送協会しかなかったこと、住宅事情・ラジオの聴取状況などをあげ、日本では諸外国に比べて統計資料以上にラジオの影響力があったことを指摘しています。
本書では、松岡洋右をはじめとする政治家がラジオを通してあおった国民の戦争熱を、下村宏の提案で天皇陛下による放送(玉音放送)で収めることに成功したことを指摘しています。
このような見方もできるのかと感心させられる本でした。興味があれば一読をおすすめします。
(2021/12/19にリンク先をアーカイブに修正済み。)タイトル: | ラジオの戦争責任 |
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著者: | 坂本 慎一 |
出版社: | PHP研究所 |
発売日: | 2008年3月 |
定価: | 760円(+税) |
ISBN-13: | 978-4569697758 |
目次: |
序章 世界最強のマスメディア・日本のラジオ 第一章 「超絶」の演説家 高嶋米峰 第二章 時代の寵児 友松圓諦 第三章 熱意の商人 松下幸之助 第四章 希代のラジオ扇動家 松岡洋右 第五章 玉音放送の仕掛け人 下村宏 終章 昭和初期ラジオの功と罪 |