最近はNHKの不祥事を背景に、NHKの受信料を不払いする人やNHKとの契約を拒否する人がいます。この傾向が続くと、公共放送であるべきNHKとテレビの視聴者の距離を広げていくだけに終わるでしょう。
しかしながら、現在のNHKが望ましいとは言えないものの、公共放送は必要と考える人も多いのではないかと考えます。そこで、これからNHKとテレビの設置者との受信契約をもとにして、NHKを変えていく方法を考えていきたいと思います。
NHKは、テレビ等の設置者に受信料を払わなければならないとよく言います。詳しく説明してくれる人なら、放送法で受信契約を締結する義務があるから、NHKが定めた日本放送協会放送受信規約に基づいて受信料を払う義務があると言ってくれるでしょう。
しかし、ここで一つ論理の飛躍があったことに気付いた方は、本当に鋭い人です。以下で放送法を丁寧に見ていきましょう。
まず、放送法第32条第1項に「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。」とあります。この条文にあるように、テレビ等の設置者の義務は「NHKと契約すること」だけで、いつからどのような契約を締結するかについては法律上当事者間の交渉にゆだねられています。
一方、NHKは放送法第32条第3項に「協会は、第一項の契約の条項については、あらかじめ総務大臣の認可を受けなければならない。」と書かれていることから、契約前に契約の条項について総務大臣の認可を受ける必要があります。現在は日本放送協会放送受信規約が唯一総務大臣の認可を受けた契約条項となっているようですが、NHKが個別事例について別の契約条項を用意して総務大臣の認可を受けることも法律上可能です。
テレビ等の設置者は日本放送協会放送受信規約以外の契約を締結した場合でも、受信契約を締結する義務を果たしたことになります。また、NHKも契約前に契約の条項について総務大臣の認可を受ける限りにおいて、日本放送協会放送受信規約以外の契約を締結することが認められています。
つまり、受信契約を日本放送協会放送受信規約に基づいて行わなければならない法的義務はなく、契約条項についてはNHKと交渉可能なのです。この契約交渉をNHKが拒否した場合は、契約できない原因はNHK側が契約を拒否したことにあります。テレビ等の設置者はNHKと契約を締結しようと交渉しており、NHKが拒否しているだけなので、放送法第32条第1項の上からは問題ありません。そもそも契約をいつまでにしなければならないかについても法律に定めがありませんから、各自納得できるまで交渉を行い、自分の希望条件とNHKの希望条件を勘案の上でNHKと受信契約を締結すればよいでしょう。
よく言われることですが、放送法第32条第1項に違反した場合も罰則はありません。これは、受信料を払っている人からは色々言われていますが、NHKの権利義務を確認すれば理由は明らかです。
NHKには受信契約の締結義務がないので、テレビ等の設置者は受信契約の締結を拒否される可能性があります。
この場合に罰則があると、NHKに対して言論で批判しているテレビ等の設置者がいた場合、NHKは契約締結を拒否した上で国家機関にお願いして罰則を科してもらい、NHKに対する批判を押さえようとするかも知れません。一般的にも、自分に責任がない行為を罰することは不合理でしょう。
また、民法の一般原則に基づいて、NHKが受信契約締結義務の不履行として損害賠償請求の民事裁判を起こすことができると言われますが、実例はない模様です。この理由は、今までの議論から以下のように推測可能です。
- 契約を締結していないので、どのような受信契約となるかは交渉次第であり、法律上不明
- 法律上定めがないので、契約の始期となるべき日を特定不能
もちろん、事情によっては
放送法第32条第1項ただし書きから契約義務が存在しないと主張されることも嫌っているのでしょう。
これからの議論では、上記をふまえ現在契約していないテレビ等の設置者に対し、自分の希望条項・NHKを真の公共放送としてよみがえってもらうために必要な条項・受信料収集に関する条項を入れた受信契約をNHKに迫ることを勧めたいと考えます。(これについては次回以降で。)
本文を書くに当たり、放送法の「契約」を考えるを参考とさせて頂きました。なお、本文の記載内容には一定の注意を払っておりますが、万一誤りがあった場合でも責任は負いません。