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NHK 受信料・受信契約に関する記事一覧

[NHK]

今までケーブルテレビで受信契約を結ぶ人がいたのは何故? / 2011-11-06 (日)

当サイトでは、2011年6月30日の放送法全面改正以前の放送法についていくつか記事を書いています。そこでは、ケーブルテレビ受信者はNHKと受信契約を締結する必要がないと述べていました。
それでは、何故実際に契約している人がいたのかという疑問がわきます。本記事ではその理由を述べます。

(従来の記事は、基本的に2011年6月30日の放送法全面改正に追随できていないのですが、公開日・最終更新日が各記事ごとに記載されていますので、「当時そうであった」記録として現状を保持したまま公開し続けることにします。)

有線ラジオの発祥

ケーブルテレビを法的に見ていくと、その前身の有線ラジオの源流を探る必要があることから、歴史は戦前にさかのぼります。
有線ラジオの源流は、とある地方のお寺の住職さんの家からラジオのスピーカーケーブルを分岐させて、お隣の家にも延長した上でスピーカーを置いたのが始まりとのことです。(「声」の有線メディア史―共同聴取から有線放送電話を巡る“メディアの生涯”、坂田謙司著)
当時はラジオが高級品で一家に一台は夢のまた夢の状況でした。電気についても一日中供給されている家が珍しいなどの事情もあり、加入者の家庭にはスピーカーしかなく電力供給が不要であった有線ラジオが少しずつ普及することになります。これらの有線ラジオ運営者は、電波管理局やNHKにも現状を報告しつつ事業を行っていたようです。
しかし、この当時、有線通信は(当然有線通信を使っての「有線放送」も)NTTの前身組織(この文脈では、電電公社よりさらに古く、逓信省など)以外が行うことは禁止されていたのです。当然、有線ラジオを民間の者がするのも違法行為ですが、有線ラジオ加入者も恩恵を受けますし、国としてもラジオが普及していないところに勝手に普及させてくれることがあり、(地方によって異なったようですが)取り締まりはあまりしなかったようです。

NHKにも相談したわけですが、NHKは「有線ラジオ加入者も聴取料(受信料)を払うこと」を要求したのです。そもそも当時の法律からすると民間人が有線ラジオをすることは違法行為です。当然、違法行為から受信料を取れるはずもないのですが、有線ラジオ運営者としては「法律に違反して勝手に有線放送をしている」と訴えられないようにするにはNHKの要求を聞くしかないわけです。
まあ、有線ラジオ運営者は「NHKが言っているのだから正しいだろう」と思っていたのかも知れません。

このようなわけで、「有線ラジオ加入者とNHKが受信契約を結ぶ」という前例ができたのですね。

有線ラジオの合法化以降

戦後になり、有線放送については数も増え、有線ラジオが選挙活動にも使われるなどしたこともあり、議員立法で合法化されました。(要するに、選挙活動で使う場合は全候補者に同等の条件で使わせましょうという趣旨です。)
もし必要なのであれば、その際に有線ラジオ加入者がNHKと受信契約を締結する必要があるように法律を制定するべきだったのでしょうが、そのような措置は取られませんでした。

しかし、その時点でNHKは、受信契約を解約したり、今まで受け取った受信料を返金することもありませんでした。そのまま受信契約を必要と主張し、締結し続ける道を選びます。
ケーブルテレビについても、上記有線ラジオでの前例があったこと、始めのケーブルテレビ局にNHKも資金援助等を通して参画していたことから、そのままケーブルテレビでも前例の獲得に成功したのでしょう。

結局、法律上は平成23年6月30日の放送法改正まで、ケーブルテレビの受信者は一貫して受信契約の締結が必要ないとされていました。しかし、NHKは多くの人と受信契約する際には、このようなことに触れずに受信契約を締結し、受信料を集金していたわけです。

例え違法なことから始まったのであっても、前例があるというのは強かったわけですね。