変更点
2008年2月27日追記
そもそも予算は対象とする団体(この場合NHK)しか拘束しません。ですから、放送法37条4項は、NHKに対し予算に記載する額の受信料とすることを義務づけているだけです。
NHKは「毎事業年度の収支予算、事業計画及び資金計画を作成し、総務大臣に提出しなければならない」とされており、これが内閣を経て国会に提出され、承認を受けることになっています。要するに、受信契約の内容にあわせた受信料を予算案に記載する必要があり、受信契約を変更して受信料を変更する場合は、あらかじめ予算に記載する必要があるとの定めと思われます。
以上のことから、以下の私の記述(追記前)には誤りがあります。誤っていると思うところに打ち消し線を付けておきます。
追記前の冒頭部
さて、またもやNHKの受信契約ネタです。前回、有線放送はやはり放送でないのかでは、昭和59年2月25日に発行された有斐閣の法律学全集15-Ⅰ交通法・通信法〔新版〕の記述を元に、有線放送(CATV・ケーブルテレビ)受信者が、NHKと受信契約を締結する義務が法律上ないことを確認しました。
放送法37条4項
さて、実はアンテナを設置してNHKの放送を受信している人について、有線放送はやはり放送でないのかには書いていなかったことでわかったことがあります。
「第三十二条第一項本文の規定により契約を締結した者から徴収する受信料の月額は、国会が、第一項の収支予算を承認することによつて、定める。」(放送法37条4項)
やはり、書籍を参照することは重要ですね。この規定は今まで見落としていました。
放送法37条4項の一解釈
放送法37条4項をどう解釈するべきかは難しいものがあります。
受信契約でどのような受信料を定めようとも、国会の決議で上書きすることが可能とも読みとれる条文です。
しかし、この解釈は本来不当と考えるべきものです。なぜなら、この条文の解釈が問題になる場合は、NHKは自ら合意したはずの受信料とは異なる額を、受信料として適正として予算案を国会に提出したことになるからです。(有斐閣の法律学全集15-Ⅰ交通法・通信法〔新版〕(355-356頁)は、NHKの予算は国会で修正できないと解しています。)
もし、国会が予算案を修正したのなら、両当事者の合意を無視して国会が契約内容の一部を変更したことになるので、国会が両者の合意で結ばれた契約内容に対して介入することとなりそれまた不当であると思われます。
NHKの解釈?
上記問題があるにもかかわらず、NHKは受信契約でどのような受信料を定めようとも、国会で上書きすることが可能と認識していると、私は考えます。
なぜなら、未契約者へ対して「NHKは、未契約世帯に対し、放送法で定められた受信契約を結ぶよう求める民事訴訟を起こすことを検討中」である理由がわかるからです。
法律上、受信契約締結義務者は日本放送協会受信規約によりNHKと契約する義務はなく、他の契約条項によってNHKと契約しても良いのです。ですから、受信契約締結義務者に受信料が実質0円の受信契約を締結するように提案される可能性もあります。これでは訴訟代がもったいないだけです。
しかしながら、NHKは放送法37条4項の適用を主張して、どのような受信契約で合意しても最終的な受信料に違いがないとして日本放送協会受信規約による契約を迫れば、それなりに説得力が出てきます。
対策?
それでは、受信契約締結義務者が、NHKと受信契約を締結する際に以下のような条項を含む受信契約の締結を主張すればどうでしょうか?
「放送法37条4項によって定められる受信料が本受信契約に定める受信料を超過する場合は、超過するようになる前の月末をもって受信契約は解約される。」
法律上、受信契約締結義務者は日本放送協会受信規約によりNHKと契約する義務はなく、他の契約条項によってNHKと契約しても良いのですから、当然このような契約も両者の合意がある限り有効です。
NHKが自ら合意した受信料に基づいたNHK予算案を国会に提出し、それが国会で承認される限りは解約されないはずですから、理論上、特に不当な条項ではないはずです。
このような受信契約の場合と日本放送協会受信規約による受信契約で、もし最終的に支払うべき受信料に差が出るのであれば、裁判所も法律の根拠なくどのような条件で合意が形成されるかを決定することは困難でしょう。
放送法(一部)
第三十七条 協会は、毎事業年度の収支予算、事業計画及び資金計画を作成し、総務大臣に提出しなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 総務大臣が前項の収支予算、事業計画及び資金計画を受理したときは、これを検討して意見を附し、内閣を経て国会に提出し、その承認を受けなければならない。
3 前項の収支予算、事業計画及び資金計画に同項の規定によりこれを変更すべき旨の意見が附してあるときは、国会の委員会は、協会の意見を徴するものとする。
4 第三十二条第一項本文の規定により契約を締結した者から徴収する受信料の月額は、国会が、第一項の収支予算を承認することによつて、定める。
参考法令等
免責
本文の記載内容には一定の注意を払っておりますが、万一誤りがあった場合でも責任は負いません。