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[日記/2007/March]

「おふくろさん問題」JASRACに飛び火? / 2007-03-11 (日)

「おふくろさん問題」は皆さんご存じでしょうが、簡単にまとめると、森進一さんが「おふくろさん」の歌詞の冒頭に、作詞家の川内康範さんの許諾を経ずに別の方に作ってもらった歌詞を付加してコンサート・紅白歌合戦等で歌ったことから、それを知った作詞家の川内康範さんが怒り、騒動になっているといった問題です。

ワイドショーなどによれば、「おふくろさん」作詞家の川内さんは、JASRACに対して森進一さんに歌を歌わせるなと申し立てたようです。(同じくワイドショーなどによれば、JASRAC側は、この件はJASRAC役員に対して私的にお手紙でお話があったのであって、JASRACへの正規の届出は無いとしているようです。)

私は、この話を初めに聞いたとき、JASRACが何と答えるかが見物でした。
なぜなら、今回の件に対し、JASRACが法的な立場をそのまま表明するならば、以下のように答えるのが正しいことになるはずだからです。

「特定の誰かに許諾しないような形態の契約は取り扱っていません。そのため、著作権料を払う限り、誰であっても使用可能です。著作人格権の問題は当方は関知しませんので、当事者間で解決してください。」

ところが、このような解答をすれば、作詞家の川内さんが怒ってJASRACから自分の曲を全て引き上げる可能性があります。場合によれば、JASRAC以外の音楽著作権管理団体に委託するかもしれません。
メジャーな楽曲について、JASRAC以外の音楽著作権管理団体が管理することは現在はあまりないようですが、このような事例を通して出てくると、他の曲でもJASRAC以外の団体が管理するようになるかもしれません。JASRACとしては、できれば避けたいことと考えるでしょう。

また、今回の川内さんの言い分(森進一氏には自分が権利を持っている曲の使用を許諾しないこと)を全面的に認めると、JASRACが各曲ごとに個別の条件を付ける前例ができることになります。他の作曲家、作詞家から、各曲ごとに個別の条件を付けるように求められたときに断るのは難しくなるでしょう。一度認めれば、金銭面でも個別の条件が主張される可能性がありますから、JASRACとしては避けたいと考えるでしょう。

このようなことから、この声明(「おふくろさん」のご利用について)の内容を初めにワイドショーで聞いたときは、「うまいこと逃げたな」と思ったものです。

後で、「おふくろさん問題」JASRAC見解の違和感。などを見て、著作人格権を管理していないJASRACが著作人格権について発言することに対する違和感を感じましたが、JASRACの至上命題は「曲を預かる条件を変えずに、作詞家の川内さんを怒らせない」ことなのでしょうから、まあ問題ないと認識しているのでしょう。
そもそも関係ないはずの著作人格権について発言したところで、著作人格権を所有する作詞家の川内さんの望む方向ですから、川内さんから苦情が来る心配は無いですし。また、森進一さんも、川内さんの許しがなければ歌わないと言っているようなので、そちらから問題となる事もないでしょうしね。

JASRACも色々と文句の言われる点のある組織ですが、JASRACが「特定の誰かに曲の使用そのものを許諾しない」という前例を作らなかったこと自体は評価してもいいと思います。JASRACが特定の人に曲の使用を許諾しない結果として、世間に知られた曲が歌えない人がいるというのは、一般的に考えるならば音楽文化の発展にいいこととは考えられないですからね。(著作者の許諾無く改変した曲を歌う件については、そもそもその曲が改変されたものであるかも含めて、別の方法で解決されるべき問題と考えます。)
まあ、「特定の誰かに曲の使用そのものを許諾しない」という前例を作らなかった動機の方は、JASRACの権益を守るためである可能性は強いのですが。