以下は、当サイトのシリーズ記事一覧へのリンクです。

涼宮ハルヒの憂鬱 無駄知識シリーズの記事一覧

NHK 受信料・受信契約に関する記事一覧

(注意)2011年に放送法が改正されたので、それ以前のNHKに関する記載は現状にそぐわない可能性があります。

[NHK]

インターネット接続に対してNHK受信契約を義務付けへ / 2010-03-24 (水)

追記(2010年6月20日記載)

本記事に記載されている放送法改正案は、衆議院で可決の上で参議院に送付されていましたが、先の国会閉会と共に廃案になりました。

本記事記載後の国会にて、政府側は「インターネット接続は放送としない」との趣旨の答弁をしています。(必要であれば国会議事録等をご参照願います)
一方で、立教大学社会学部の砂川浩慶准教授は、上記の国会答弁があった後もインターネット接続は放送になるとの見解を示しています。

なお、砂川浩慶准教授は2009年7月に出版された「放送法を読みとく(商事法務)」の著者の一人でもあることから、放送法分野についてもそれなりの知識を有している方であると思われます。
このように専門書に共著として参加されている方から、今回廃案となった放送法改正案について、インターネット接続は放送になるとの前提を元にして「ブログやツイッターなどインターネット上の個人の情報発信までが、政府の規制下に置かれる」との解釈を示されていることから、インターネット接続は放送になるとする解釈に一定の蓋然性があることを示しているのだろうと考えています。

なお、砂川浩慶准教授の見解は以下で見ることができます。
インターネットを政府の規制下に置く放送法改正が衆院を通過:ビデオニュース・ドットコム インタビューズ(2010年5月29日)

追記前の冒頭部

平成22年3月5日(金)の定例閣議にて閣議決定された「放送法等の一部を改正する法律案(参照:総務省の国会提出法案)」ですが、改めてよく見てみました。

2010年3月国会提出の「放送法等の一部を改正する法律案」より

(定義)
第二条 この法律及びこの法律に基づく命令の規定の解釈に関しては、次の定義に従うものとする。
 一 「放送」とは、公衆によつて直接受信されることを目的とする電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。)の送信(他人の電気通信設備(同条第二号に規定する電気通信設備をいう。以下同じ。)を用いて行われるものを含む。)をいう。
 二 「基幹放送」とは、電波法(昭和二十五年法律第百三十一号)の規定により放送をする無線局に専ら又は優先的に割り当てられるものとされた周波数の電波を使用する放送をいう。
 三 「一般放送」とは、基幹放送以外の放送をいう。
(以下略)

まず、電気通信事業法第二条第一号によれば、「電気通信」は「有線、無線その他の電磁的方式により、符号、音響又は影像を送り、伝え、又は受けることをいう 」とされています。
「公衆によつて直接受信されることを目的とする」は、著作権法第二条の中で公衆送信・自動公衆送信などの定義にも使われている表現です。なお、公衆送信は「公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信(中略)を行うことをいう 」とされています。また、自動公衆送信は「公衆送信のうち、公衆からの求めに応じ自動的に行うもの(放送又は有線放送に該当するものを除く。)をいう。」 とされており、自動公衆送信・それに関連した送信可能化権がインターネットを対象とした規定であったことを想起していただければ、「公衆によつて直接受信されることを目的とする」の表記はインターネットの通信も含むことがわかります。
上記のことから、今回の改正案が成立した場合は放送法上の「放送」の意味としては、従来からの放送(無線通信の送信)だけでなく、ケーブルテレビ(有線放送)やインターネットも含まれることになります。

これでは、インターネット上の通信は放送と考えるしかありません。また、今までの放送に相当する基幹放送以外の放送は一般放送とされていますが、一般放送は126条の規定で総務大臣に対して住所・氏名等を登録する必要があるとされています。なんか前に提案されていたネットを規制すると言われた放送法案と中身は大同小異なのでしょうか?それとも、私が何か勘違いしているのですかね?
それはさておき、今日はNHKの受信料について見ていきます。

2010年3月国会提出の「放送法等の一部を改正する法律案」より

(受信契約及び受信料)
第六十四条 協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であつて、テレビジョン放送及び多重放送に該当しないものをいう。第百二十六条第一項において同じ。)若しくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については、この限りでない。
2 協会は、あらかじめ、総務大臣の認可を受けた基準によるのでなければ、前項本文の規定により契約を締結した者から徴収する受信料を免除してはならない。
3 協会は、第一項の契約の条項については、あらかじめ、総務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
4 協会の放送を受信し、その内容に変更を加えないで同時にその再放送をする放送は、これを協会の放送とみなして前三項の規定を適用する。

2010年3月国会提出の「放送法等の一部を改正する法律案」第64条によれば、「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない」とされています。また、NHKの公式サイトにあるファイルは全て自動公衆送信され、これは法案で言う「放送」に該当することになります。公式サイトには音声ファイル(法案上はラジオ放送)以外のファイルも当然ありますから、そのファイルがあることを根拠として放送法64条の規定により受信契約を締結する必要があることになるでしょう。
実際に受信したかではなく、受信可能な設備であるかが問題ですから、やはりネットにつながる全てのPC・機器が、NHKの公式サイトに訪問可能であるとして「NHKの放送」が受信可能な受信設備となるのでしょうね。

2chでは、数日前に「テレビ離れ? インターネットから受信料とればいいじゃない。」と言うスレがたっており、その1曰く
『3月5日に閣議決定された通信と放送の融合に向けた放送法や電波法などの改正案に、インターネット接続に対してNHK受信契約を義務付ける条文が盛り込まれていることが判明した。現在の放送法ではインターネット接続しているPCに関しては、NHKとの受信契約を結ぶ義務は無いが、改正案ではこれらのPCも受信契約の対象となる。』
とされていました。スレの参加者の中にも釣りスレ扱いしていた方がいましたが、私が2010年3月国会提出の「放送法等の一部を改正する法律案」を読む限りは「インターネット接続に対してNHK受信契約を義務付けへ」で間違いなさそうです。

これは重大な変更点であり、「放送法等の一部を改正する法律案」の概要に「インターネット接続についても今回の法改正によりNHKと受信契約する必要が出てきます」と記載するべきと考えますが、実際には何も記載されていません。こっそり通して後で出すつもりなのでしょうか?

正直、まだ「本当かなぁ」と疑問に思っているところです。もし「そこが違うよ」というところがあればどんどんつっこんでいただければ幸いです。
(お返事が素早くできるかは別問題ですが)

変更点

2010年3月27日午前1時頃追記

『上記のことから、……含まれることになります。』の一文を修正。有線放送が現行の放送法に言う放送でないのは当然だよね。

[ このエントリへはツッコミ出来ません ]
1: 事実をしりたい者 (2010/03/24 22:48)
始めまして今後ともよろしくお願いします。
5に「民法やその他法律を準用する」を追加してほしいところです。
2: nonki (2010/03/27 01:05)
事実をしりたい者さんへ
「放送法等の一部を改正する法律案」64条の話ですよね。
そのような記述は特にいらないと思います。現在でもそうですから。ただ、そのようなことに無知な受信料徴収員はいるかもしれませんがね。
3: 事実をしりたい者 (2010/03/30 22:25)
お返事。ありがとうございます。
話は変わりますがNHK側が言う「受信料は視聴の対価ではない」
しかし消費税(国内取引に掛る対価に税)は課税扱いです。
さてなんの対価で消費税が掛っているのか疑問に思っています。
http://www.nta.go.jp/taxanswer/shohi/6201.htm
http://www.shohi.com/news/news014.html
二条の五
http://www.gyosei.co.jp/home/pickup/3180019/zeiroku_horei/a330486001.html
4: nonki (2010/03/30 23:06)
消費税法第四条では、「国内において事業者が行つた資産の譲渡等には、この法律により、消費税を課する。 」とされています。
なお「資産の譲渡等」は、消費税法第二条第一項第八号にて定義されており「役務の提供に類する行為として政令で定めるもの」もその中に含まれます。
NHKの受信料は、消費税法施行令(政令)第二条第一項第五号にて「役務の提供に類する行為」として定義されています。

故に「役務の提供に類する行為」と政令で定義されていることが原因で消費税がかかっているというのが正しいです。
法律で「政令で決めていいよ」とされているのを受けて、政令で消費税を取る対象として定義したことが消費税がかかる原因ですから、「受信料が視聴の対価であるかどうか」は消費税の対象となるかどうかには無関係です。
5: nonki (2010/03/30 23:25)
ちなみに私は、少なくとも現行法上は「受信料は視聴の対価ではない」と考えています。視聴の対価であるならば、NHKの番組を再送信しているケーブルテレビの加入者が法律上NHKと受信契約を締結する必要が無い理由が説明できないからです。
NHKの受信料は、視聴の対価ではなく全国に等しく(民放も含めた)放送を広げるための負担金と考えるのが現行法上は合理的です。自己で有線放送の費用を負担しているケーブルテレビ受信者は、すでに放送を広げるための負担金に類すると考えられる有線放送への利用料を払っているため、NHKと受信契約を結ぶ必要がないわけです。
NHK受信料が視聴の対価ならば、有線放送局が再送信するNHK制作の番組を見ている人が受信料を支払わなくてもいいのはおかしいと思いませんか?(逆に言えば、今回の放送法改正案では「NHK受信料は視聴の対価」とすることになるのでしょう。)
6: nonki (2010/04/02 00:00)
http://slashdot.jp/comments.pl?sid=489284&cid=1737882
によれば、本改正案の放送にインターネットが含まれるならば、現行法上インターネットは(音声のみのファイルを除き)「有線テレビジョン放送」であるはずとのことのようです。定義上、公衆によつて直接受信されることを目的とする有線電気通信の送信で有線ラジオ放送をのぞいたものが有線テレビジョン放送ですから、確かに現在の状況を前提に条文を読むとそうなります。ただ、この部分は昭和47年の制定当時から条文に変更の無かった部分ですので、当時の状況(インターネットで公衆に送信などあり得なかった)を元に解釈するのが妥当かもしれませんね。
一方、今回の法案では放送の定義を書き直していますので、これは現在の状況(インターネットで公衆に送信はあり得る)を元に解釈するのが妥当と思われます。
なお、逆に今回の改正後もインターネットが「放送」に該当しないとするならば、同じくIP技術を使用してテレビ放送を再送信している「ひかりTV」などの受信者は改正案第六十四条の「再放送をする放送」の「放送」という要件に該当しなくなりそうなものですがどうなのでしょうかね。
7: 事実をしりたい者 (2010/04/11 18:28)
返信 遅くなってすいません。
私も視聴の対価ではないと思います。
「役務の提供に類する行為」で、どういう役務だろうと疑問に思います。
有線放送の場合(放送法に直接受信)で単純に契約不要となっていると当方は考えます。
インターネットが「放送」にあたらないとすると地上波だけではなく
衛星放送も海外経由(B-casサーバー設置)し配信で視聴できると思われます。
衛星契約者等に不満が出そうな感じですね。携帯のsim解放が先行し
わが国だけのB-casシステムの解放はどうなるのか今後の動向が気になります。
この記事のリンク元 | 155 | 13 | 10 | 10 | 4 | 2 | 2 | 2 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 |

[NHK]

2010年3月の「放送法等の一部を改正する法律案」とNHK受信料 / 2010-03-15 (月)

平成22年3月5日(金)の定例閣議にて閣議決定された「放送法等の一部を改正する法律案」が総務省の国会提出法案内に掲載されました。
正直改正箇所が多すぎてどこを見ればよいかわからない有様となっていますが、当サイトとしては一般の方に一番影響のあるNHK受信料関係の記載を見ていきます。

放送法の改正案として以下の記載があります。

2010年3月国会提出の「放送法等の一部を改正する法律案」より

(受信契約及び受信料)
第六十四条 協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であつて、テレビジョン放送及び多重放送に該当しないものをいう。第百二十六条第一項において同じ。)若しくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については、この限りでない。
2 協会は、あらかじめ、総務大臣の認可を受けた基準によるのでなければ、前項本文の規定により契約を締結した者から徴収する受信料を免除してはならない。
3 協会は、第一項の契約の条項については、あらかじめ、総務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
4 協会の放送を受信し、その内容に変更を加えないで同時にその再放送をする放送は、これを協会の放送とみなして前三項の規定を適用する。

2010年3月の「放送法等の一部を改正する法律案」の新旧対照条文より引用

注目すべきは2010年3月国会提出の「放送法等の一部を改正する法律案」第64条第4項でしょう。今回新たに加わった条文で、「協会の放送を受信し、その内容に変更を加えないで同時にその再放送をする放送は、これを協会の放送とみなして前三項の規定を適用する。」となっています。
もちろん、これに対応する条文が過去にあり、その記載をまとめただけなのであれば単なる技術的な条文修正になるでしょう。

そこで現在の放送法(及び関連法)を見ると、衛星放送・受信障害対策中継放送についてはNHKの放送ではないもののNHKの放送と見なす趣旨の記載があります。(衛星放送については、放送法第2条の2第2項2号にて「協会の放送(協会の委託により行われる受託国内放送を含む。第三十二条第一項本文において同じ。)」として規定されています。また、受信障害対策中継放送は、放送法第53条の9の3の規定により、NHKの放送を受信障害対策中継放送局が受信した上で再送信した放送は「協会の放送」とみなして、放送法第32条第1項の規定を適用することとされています。)
しかしながら、現在ケーブルテレビ(有線放送、または電気通信役務利用放送法を根拠とした有線役務利用放送)については放送法第32条第1項を準用する規定はないことから、ケーブルテレビについては2010年3月国会提出の「放送法等の一部を改正する法律案」第64条第4項が新設の規定となり、この規定を根拠にケーブルテレビ受信者はNHKと受信契約を締結する必要が出てくることになります。

これは重大な変更点であり、「放送法等の一部を改正する法律案」の概要に「ケーブルテレビ受信者は今回の法改正によりNHKと受信契約する必要が出てきます」と記載するべきと考えますが、実際には何も記載されていません。

ケーブルテレビ受信者は法律上受信契約を締結する義務がないにもかかわらず、NHKはその点を隠し、長年にわたりケーブルテレビ受信者をだまして根拠のない受信料を徴収してきました。
今回の放送法改正案はNHKが過去に行ってきた違法行為を何らの反省もなく単に追認するものであり、非常に遺憾ですね。本来であればこのような非常に多数の一般の方が影響する法改正については総務大臣自らが「今回の改正案でケーブルテレビ受信者がNHKと受信契約を締結する必要が出てきた理由」と「過去に違法に集金したNHK受信料の総額とその返還方法」を発表すべきと考えるのですがね。

[ このエントリへはツッコミ出来ません ]
1: 有線放送加入者 (2010/03/19 19:34)
この放送法改正で受信契約を締結せざるを得なくなった場合、納得できる契約書を作成して(もちろん有期限で)契約することになろうかと思いますが、その際に、

「当方のケーブルテレビは、その有線放送事業者との有線回線を確保する為の費用の全額を当方が負担しているのであり、現在NHKには一切負担していただいておりません。第三者のNHKが、当方で確保しているこの有線回線の一部を使用して、当方へ映像・音声コンテンツ等を送信するということであれば、NHKはその有線回線の使用料を当方に対して支払う義務があります。したがいまして、当方はNHKに対して月額2500円の有線回線使用料を請求いたします。」

という主張をして、NHKから毎月有線回線使用料を支払ってもらうというのは如何でしょうか。
こういう契約なら受信料を支払ってもいいように思います。
税法上は雑収入になるかと思いますので、その他の雑収入と合算して年間20万円以下ならば控除内で確定申告も必要ないと思います。
2: nonki (2010/03/20 00:47)
「回線使用料の請求」とは思い切ったアイディアですが、「ケーブルテレビ局が有線放送したいと言うのでNHKが許可している」と言うのが法律上の構成ですので、回線使用料の請求は難しいだろうと思います。
もしこのアイディアが認められるなら、私は民放に対しても回線使用料を請求に行きたいと考えますよ。

あと、NHKの受信料がどのような理念・必要性で集められるものかを考察することで、色々な受信契約を考えることができるでしょう。
それについてはまたまとめたいと考えています。
3: 素人 (2010/06/16 22:42)
法律の専門家ではありませんが、放送法改正案第六十四条4については、ケーブルテレビ受信者には関係ないのではないでしょうか
放送法第二条に、放送とは、無線通信の送信と定義されています。
本条文に記載の「放送」も無線通信の送信と解釈できると思います。
4: nonki (2010/06/17 20:48)
えっと、この記事で話題にしていた放送法改正案では、放送法第二条も以下のように改正されることになっていました。

> 「放送」とは、公衆によつて直接受信されることを目的とする電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律
> 第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。)の送信(他人の電気通信設備(同条第二号に規定
> する電気通信設備をいう。以下同じ。)を用いて行われるものを含む。)をいう。

つまり放送の定義も同時に変更されることになっていたのです。
故に本案によって放送法が改正された場合は、ケーブルテレビも「放送」となります。ネットについても放送になるのではないかとの指摘については、政府は国会答弁で否定しましたが、国会答弁後もネットも放送に含まれると指摘する学者もいらっしゃいます。

なお、今回提案されていた放送法改正案は、最終的には国会閉会と共に廃案になりました。
5: nonki (2011/03/20 22:00)
上記の放送法改正案と同じ内容(だったと思う)の放送法改正案は既に可決・成立しています。この書き込みをしている時点で、受信料関係の部分が施行されているかどうかは調査していません。必要であれば各自でお調べ願います。
この記事のリンク元 | 28 | 3 | 3 | 2 | 2 | 2 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 |

[NHK]

放送法等の一部を改正する法律案が閣議決定 / 2010-03-07 (日)

平成22年3月5日(金)の定例閣議にて「放送法等の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。
ニュースでも報じられましたが、「NHK会長選びが円滑になる」「放送と通信に関連する法律を統合して電波をより有効活用できる」「メディア出資規制を法定化」などが報じられています。しかし、私的には新聞猛反発の「クロスメディア規制」「制度のあり方を検討」(J-CASTニュース)にマスコミ関係者に配られたと思われる資料をPDF化した「放送法等の一部を改正する法律案の概要」をアップロードしてくれていたのが一番うれしかったり。

この資料を見ると、放送法の改正事項として以下の通りの記載があります。

第一 放送法の一部改正関係
一 定義に関する事項
1 放送の定義を、公衆によって直接受信されることを目的とする電気通信(電気通信事業法第二条第一号に規定する電気通信をいう。)の送信(他人の電気通信設備(同条第二号に規定する電気通信設備をいう。以下同じ。)を用いて行われるものを含む。)とすること。
2.放送事業者の定義を、機関放送事業者及び一般放送事業者とすること。
3.その他の定義規定の整備をすること。

2010年3月の「放送法等の一部を改正する法律案の概要」より引用

今回は思い切って大改正に踏み切るようで、法律上の用語の定義部分から手を入れることになっているようです。上記1で、ケーブルテレビ受信者がNHKと受信契約する義務がない理由の一つ「有線放送は放送ではない」が消失する可能性が大きいですね。
私は従来より費用負担の面から考えて「有線放送は放送ではない」ことを理由にNHKと受信契約を締結する義務がないのは合理的であると考えています。つまり、NHKに対し受信料を負担するのも、有線放送加入者がケーブルテレビ会社に費用負担をするのも、社会全体に放送(含む有線放送等)をあまねく広げるという放送法等の趣旨を貫徹するために必要となる費用を誰からどのようにどの組織に対して集めるかという問題であるからです。
私の考えるところでは、NHKの受信契約が受信意志等に関わりなく契約を義務づけられているのは、「NHKに対して払う受信料は社会全体に放送をあまねく広げるために必要となる料金なのであって、番組に対する対価ではない」からです。逆に言うと「社会全体に有線放送等をあまねく広げるために必要となる料金をケーブルテレビ受信料として負担している有線放送加入者は、重ねて同種の料金であるNHK受信料を払う必要はない」と考えています。

あとは「その他の定義規定の整備をすること」の内容次第でいろいろな部分に影響が出るはずです。今度の改正案で、NHKの受信料制度について首尾一貫した姿を維持できるのか、どのように変化するかも要注目です。

今のところは特に賛否を述べず、内容が固まった法律案を見せていただくことにしましょう。これからが楽しみです。

[ このエントリへはツッコミ出来ません ]
1: 通りすがり (2010/03/22 09:46)
放送法 改正案第2条
1 「放送」とは、公衆によって直接受信される事を目的とする電気通信(電気通信事業法(昭和59年法律第86号)第2条第1号に規定する電気通信
をいう。)の送信(他人の電気通信設備(同条第2号に規定する電気通信設備をいう。以下同じ。)を用いて行われるものを含む。)をいう。

これ、CATV飛びこして、インターネット課金ですね。
2: nonki (2010/03/22 21:39)
ああなるほど。そもそも「放送」の定義が大きすぎて、CATV飛び越してインターネットまで行っちゃっているかな?もしかしたら、インターネットに接続できる端末は全てNHKの受信料を払う必要が出てくる可能性もあるかもしれんですね。
改めてもっと丁寧に各用語の現在の意味と改正箇所を確認してみます。
3: nonki (2011/03/21 11:00)
最近、本記事が見られているようなのでコメントします。放送の定義などに関して、法案審議などの際にどのような話題が出ていたかについては、以下を見て頂ければおおむねわかると思います。よろしければ参考にしてください。
 2010年の「放送法等の一部を改正する法律案」に関する記事一覧( http://nonki.ffvv.net/index/hosoho2010.htm
トラックバック (1)
この記事のリンク元 | 32 | 17 | 3 | 2 | 2 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 |

[NHK]

衛星セーフティネット参加者のNHK受信契約について / 2009-08-12 (水)

本記事では、書籍「放送法を読みとく」の記述を元に、NHK受信契約について考えます。(参考:当サイト内の「放送法を読みとく」紹介記事

受信料の対象は、NHKの放送を受信できる受信設備である。テレビのチューナー付きパソコンも受信料の対象となる。携帯電話のワンセグも、地上デジタルテレビジョン放送の1セグメントを利用した放送であり、その受信機は受信料の対象である。他方、2009年度から地上デジタルテレビ放送の放送衛星利用による難視聴解消(「衛星によるセーフティネット」)が始まる。NHKの地上テレビ(総合・教育)も放送されるが、実施主体は社団法人デジタル放送推進協会(Dpa)であり、NHKも民放も番組提供者(6条の再放送)に過ぎない。NHKの放送でない以上、衛星セーフティネットの受信者は特別契約による受信料しか払わなくてよいことになるが、特段の措置はとられていない。

放送法を読みとく 第3編Ⅱ 258-259ページより引用

ちなみに、「放送法を読みとく」の日本放送協会に関する第3編Ⅱは、NHK勤務時に主として放送制度を担当していた山本博史氏が執筆されています。(1950年生まれ。1975年に東京大学法学部を卒業してNHKに勤める。NHKでは主に放送制度を担当し、2005年に総合企画室業務主幹で退職した。2009年現在はメディア評論家、上智大学非常勤講師、専門はコミュニケーション制度論。)
なお、「放送法を読みとく」は、大阪大学大学院高等司法研究科の鈴木秀美教授、専修大学文学部の山田健太准教授、立教大学社会学部メディア社会学科の砂川浩慶准教授のお三方が編者として纏められたものになっております。

受信料の対象は

まずは、上記引用部から受信料の対象について見ていきたいと思います。
NHKの放送を受信できる受信設備と記載し、テレビのチューナー付きパソコン・携帯電話のワンセグなども取り上げていますが、実はケーブルテレビは対象と記載されていません。2009年7月に出版している本ですから、当然ケーブルテレビが対象になるかどうかの議論があることは承知のことと思いますので、特に受信料の対象となるかどうかを明記して頂ければさらにありがたいのですが、この場合は記載されていない原因が受信料の対象外であるからと考えるのが正しいと思います。

なぜなら、引用部分の後の方に記載している衛星セーフティネットに関する記述では、法律上その放送を行うのが誰かまでを追求した上で受信料の対象となるかどうかを判断しており、この考えを敷衍すればケーブルテレビも受信料の対象外となるのは明らかであるからです。
このようなことから、まずは衛星セーフティネットに関する記述の詳細を見ていきます。

衛星セーフティネット参加者の受信契約について

衛星放送は法的に結構ややこしいので、一つずつ段階を追って説明していきます。

通常の衛星放送受信時は、以下の図1の通りとなります。
ここで、各家庭で受信するときには以下図1でわかるようにB-SAT(放送衛星システム)のTV放送(*2)を受信します。これはNHKの放送ではないので受信料を払わなくて良いかと言えばそうではありません。
なぜなら、NHKの委託により行われる受託国内放送であるB-SATのTV放送(*2)は、放送法第2条の2第2項2号にて「協会の放送(協会の委託により行われる受託国内放送を含む。第三十二条第一項本文において同じ。)」とされているため、放送法32条1項本文の「協会の放送」に含まれるからです。

ところが2011年のアナログ放送終了後も地上デジタル放送が受信できない世帯に対して衛星を利用した再送信を行う計画である衛星セーフティネットは、以上とは事情が異なります。この場合は、以下の図2の通りとなります。
ここでは、各家庭で受信するときには以下図2でわかるようにB-SAT(放送衛星システム)のTV放送(*5)を受信します。これはNHKの放送ではありません。また、B-SATのTV放送(*5)はDpa(デジタル放送推進協会)の委託により行われる受託国内放送であり、協会の委託により行われる受託国内放送ではありません。また、DpaのTV放送(*4)は、NHKのTV放送(*3)を放送法6条により再放送したものですので、番組内容はNHKのものと一致しますが、NHKは単に番組を提供しているにとどまりますのでDpaのTV放送(*4)はNHKの放送ではありません。結果として、放送法32条1項本文の「協会の放送」ではないことになります。
協会の放送でないことから、衛星セーフティネットについては受信料を支払う必要はありません。

ただし、衛星セーフティネットを受信できる設備を持っている者は、通常の衛星放送も受信できることから、NHKのBS衛星放送に関する受信契約を締結する必要が出てくるでしょう。
結果として、衛星セーフティネットの対象者が日本放送協会放送受信規約にて受信契約を締結した場合は、NHKの地上波TV放送と同一の番組(正確には東京地方の番組)を見ることができるのですが、NHKの地上波TV放送は受信できないことから、地上系によるテレビジョン放送の自然の地形による難視聴地域において衛星系によるテレビジョン放送のみの受信する場合の料金体系である「特別契約」になり、料金もそれに従ったものとなります。

これが、上記引用部分の「他方」から始まり引用部分最後までの記述を丁寧に解説したものです。

上記の議論をケーブルテレビに応用すると

ケーブルテレビに加入した場合は、以下の図3の通りとなります。
ここでは、各家庭で受信するときには以下図3でわかるようにケーブルテレビ局の有線放送(または有線役務利用放送)(*7)を受信します。これはNHKの放送ではありません。またケーブルテレビ局の有線放送または有線役務利用放送(*7)は、NHKのTV放送(*6)を有線テレビジョン放送法13条(または電気通信役務利用放送法12条)により再送信したものですので、番組内容はNHKのものと一致しますが、NHKは単に番組を提供しているにとどまりますのでケーブルテレビ局の有線放送(または有線役務利用放送)(*7)はNHKの放送ではありません。結果として、放送法32条1項本文の「協会の放送」ではないことになります。
協会の放送でないことから、ケーブルテレビについては受信料を支払う必要はありません。

よって、ケーブルテレビを通じてNHKの番組を見ている者は、協会の放送を受信不可能な受信設備を設置していることになり、放送法第32条1項による受信契約の締結義務は発生しません。(別途アンテナも立て、放送も受信できるようにしている場合は除きます。)

[ このエントリへはツッコミ出来ません ]
この記事のリンク元 | 1 | 1 | 1 |

[NHK]

NHK受信契約の成立について / 2009-07-30 (木)

はじめに

まずは、2009年7月28日に、東京地裁でNHKと受信契約を締結した者に対して受信料を支払う必要があるとされた判決についてです。まあ、控訴する方がいるようですので判決が確定したわけではないようですが。
判決文がどのようなものであったかは現在手元にないので知りませんが、新聞各紙の報道により概要はわかると思います。

NHK受信料不払い、男性2人に支払い命令(2009年7月28日 読売新聞)では、裁判長は「NHKのテレビ番組を実際に視聴するか否かにかかわらず、支払い義務は発生する」と述べたとのことです。

NHK受信料未払いはダメ!東京地裁「自由意思で契約、解約できた」(産経新聞2009年7月28日)では、裁判長より「男性らは自由な意思に基づいて受信契約を結んでおり、解約の方法も事前に知ることはできた」と指摘があったとのことです。

NHK受信料:合憲、2人に全額支払い命令--東京地裁(毎日新聞2009年7月29日東京朝刊)では、『判決は、NHKを巡る問題を理由に受信料を支払いたくないとする2人の主張を「一つのものの見方として尊重されなければならない」とした。しかし(1)本人や家族が02~03年、自主的に契約を交わした(2)04年3月まで支払いを続けた(3)解約には受信機の廃止が必要だと事前に知り得た--などから「(契約や契約継続は)2人の思想良心の自由を侵害していない」とした。』とのことです。

以上から判決を簡単に要約すれば、「自由意志でNHKと受信契約を結んだ以上、それ以降については民法の原則に従って両者は契約に拘束される。憲法上の問題とはならない」とのことでしょう。
結果としては、NHKが自分の納得いく体制になる(なおかつそれが永続すると確信が持てる)までは契約しないのが最善と解釈せざるを得ない判決ですが、元からそのような見解である私としては「やっぱり」の感想しか浮かびませんでした。

契約の取り消し

さて、上記判決にも示されている通り、NHKと受信契約を結ぶのは「自由意志」なので、真に自由意志ではなく勧誘員の強引な手法で「契約」してしまった場合は取り消したりできる場合があります。
例えば、NHKとの受信契約は取消しできないか(NHK22)などが参考になると思います。
『消費者は、事業者の不適切な行為(1 不実告知、断定的判断、故意の不告知、2 不退去、監禁)により自由な意思決定が妨げられたこと(1 誤認、2 困惑)によって結んだ契約を取消すことができます』とのことです。

よって、「契約と知らずに」「契約内容の説明がされず」などの事実があれば「故意の不告知」であることが、「しつこかったので」などの事実があれば「不退去」であることが、消費者契約法の取り消し理由に相当します。
なお、受信契約は「特定商取引に関する法律(旧訪問販売法)」の対象ではないため、クーリングオフの対象とはならないようです。

本論

引っ越してきたばかりで「実はラジオは持っていてもテレビを持っていない」などの場合に、ラジオの設置者(ないしその配偶者)が「ラジオでも受信料が必要と誤解」して十分に検討せずに日本放送協会放送受信規約による契約を申し込んでしまうこともあるでしょう。
この場合、ラジオに受信契約が不要であることを説明しなかったのが「故意の不告知」に該当するかは難しいところです。

しかし、この場合は日本放送協会放送受信規約の第4条が味方となります。

日本放送協会放送受信規約

(放送受信契約の成立)

第4条 放送受信契約は、受信機の設置の日に成立するものとする。

2 放送受信契約の種別の変更の日は、その変更にかかる受信機の設置の日またはその廃止に伴う前条第2項の提出があった日とする。

つまり、日本放送協会放送受信規約による受信契約は、「受信機の設置の日に成立する」契約です。そのため、他の法的関係がいかなるものであっても、受信機を設置していないにもかかわらず契約が成立することはありません。
なお、受信機は「家庭用受信機、携帯用受信機、自動車用受信機、共同受信用受信機等で、NHKのテレビジョン放送を受信することのできる受信設備をいう。」と日本放送協会放送受信規約1条2項で定義されていますから、ラジオしか所有していない方は受信機を設置していないことは明らかです。
よって、受信機を設置していないことから契約が成立しないことがわかります。

ただし、このまま放置していますと、既に受信機が設置されていると誤解して契約が成立したと認識しているNHKから受信料を催促されることになります。
そこで、契約が成立しないことを認識次第、NHKに「受信機を設置していないので契約は成立していない」と言う必要があるでしょう。

ちなみに上記の地裁判決について報道されている内容から推測すると、受信契約が拘束力を持つには、単に受信機を設置するだけでなく、さらに自由意志で契約に合意することも必要とされるようです。
契約に合意していない人に対して「放送受信契約は、受信機の設置の日に成立するものとする」と言っても、それはNHKの独り言にすぎないですから、自由意志で契約に合意する必要があるのは当然ですね。

[ このエントリへはツッコミ出来ません ]
この記事のリンク元 | 1 |