ここでは、アンテナを設置してテレビ放送を受信していたものの、途中でケーブルテレビをひいた場合など、受信契約自体が有効に成立する場合においての受信契約締結者の義務を検討します。
なお、ケーブルテレビとNHK受信料に書いたとおり、はじめからケーブルテレビでNHKを視聴している場合は、法律上NHKと受信契約を締結する義務はありません。
義務がないにもかかわらず、「NHKと受信契約を締結した」場合については、別途記載予定です。
日本放送協会受信規約による「受信機」の定義
日本放送協会受信規約第1条第2項において、「受信機」は「家庭用受信機,携帯用受信機,自動車用受信機,共同受信用受信機等で,NHKのテレビジョン放送を受信することのできる受信設備をいう。」と定義されています。また、日本放送協会受信規約には「テレビジョン放送」の定義がありませんが、放送法第2条によれば「無線通信の送信」の一種であることがわかります。これらのことから、日本放送協会受信規約に定める受信機は、無線通信の送信を受信することのできる受信設備であることがわかります。
なお、日本放送協会受信規約で別途定義していない以上、法律の定義に基づいて用語が使われていると考えるのが適当でしょう。
つまり、ケーブルテレビ等の有線電気通信の送信を受信することのできる受信設備は、日本放送協会受信規約に定める受信機(無線通信の送信を受信することのできる受信設備)ではありません。
日本放送協会受信規約第9条の義務
受信契約成立後にケーブルテレビで受信設備を設置した者は、日本放送協会受信規約に定める「受信機」を設置しなくなった以上、日本放送協会受信規約第9条によれば廃止届けを出す義務があると考えられます。廃止届けを出さなくとも罰則や割増金を払う必要はないとされていますが、受信契約締結者の義務ですから遵守するのが望ましいと思います。
まあ、世の中には罰則のない義務を遂行しない人はいるでしょうから、別に受信契約締結者が廃止届けを出さなくとも私は悪いとは思いませんが。
日本放送協会受信規約(抜粋)
第9条 放送受信契約者が受信機を廃止することにより,放送受信契約を要しないこととなったときは,放送受信章を添えて,直ちに,その旨を放送局に届け出なければならない。
2)放送受信契約の解約の日は,前項の届け出があった日とする。ただし,非常災害により前項の届け出をすることができなかったものと認めるときは,当該非常災害の発生の日とすることがある。
インターネット上ではケーブルテレビと主張して受信契約を解約できたとの例は聞きませんが、日本放送協会受信規約第9条により義務であるから廃止届けを出すだけですので、あまりそのことは気にしなくてもよいと思われます。なお、日本放送協会受信規約第9条第2項によれば、届けをしたその日をもってNHKの意志は関係なく解約されるとのことです。口座振替等をしている方はNHKが間違えて引き落としを行わないように、口座振替の廃止手続きも行っておきましょう。
もし、廃止届け提出後もNHKが解約を認めない場合でも、ケーブルテレビの受信設備設置者としての義務は全て遂行しているので放置しておいてよいでしょう。
参考法令等
本文の記載内容には一定の注意を払っておりますが、万一誤りがあった場合でも責任は負いません。