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NHK 受信料・受信契約に関する記事一覧

(注意)2011年に放送法が改正されたので、それ以前のNHKに関する記載は現状にそぐわない可能性があります。

[NHK]

その記事に訂正は必要ないと思いますよ / 2010-05-03 (月)

情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)のブログにて
【重要な訂正あり】放送法改正でネットも「放送」に…そして、ニコ動やUstの業務停止も可能に?!と言う記事があがっています。ようやく弁護士の人も今回の事態に気づきだしたかと思ってよく見ると「重要な訂正あり」となっています。

【●訂正●直接受信とは、プロバイダーを経由するようなものは含まない、ようです】

いや、プロバイダーを経由するようなものも含まれていますよ。と言うか含まれていないとすると「不当逮捕」された人が山のようにいることになります。
以下でその説明をしてみましょう。

直接受信と言う用語は、著作権法でも放送等に関連して使用されていますので参考に見てみましょう。

「著作権法」

(定義)
第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
 (中略)
 七の二  公衆送信 公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信(電気通信設備で、その一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合には、同一の者の占有に属する区域内)にあるものによる送信(プログラムの著作物の送信を除く。)を除く。)を行うことをいう。
 八  放送 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う無線通信の送信をいう。
 九  (略)
 九の二  有線放送 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う有線電気通信の送信をいう。
 九の三  (略)
 九の四  自動公衆送信 公衆送信のうち、公衆からの求めに応じ自動的に行うもの(放送又は有線放送に該当するものを除く。)をいう。
 九の五  送信可能化 次のいずれかに掲げる行為により自動公衆送信し得るようにすることをいう。
  イ 公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置(公衆の用に供する電気通信回線に接続することにより、その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分(以下この号及び第四十七条の五第一項第一号において「公衆送信用記録媒体」という。)に記録され、又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置をいう。以下同じ。)の公衆送信用記録媒体に情報を記録し、情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体として加え、若しくは情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体に変換し、又は当該自動公衆送信装置に情報を入力すること。
  ロ その公衆送信用記録媒体に情報が記録され、又は当該自動公衆送信装置に情報が入力されている自動公衆送信装置について、公衆の用に供されている電気通信回線への接続(配線、自動公衆送信装置の始動、送受信用プログラムの起動その他の一連の行為により行われる場合には、当該一連の行為のうち最後のものをいう。)を行うこと。
 (中略)
9  この法律において、第一項第七号の二、第八号、第九号の二、第九号の四、第九号の五若しくは第十三号から第十九号まで又は前二項に掲げる用語については、それぞれこれらを動詞の語幹として用いる場合を含むものとする。

(公衆送信権等)
第二十三条  著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。
 (以下略)

ここで、送信可能化権について「直接受信とは、プロバイダーを経由するようなものは含まない」と解釈すればどうなるか見てみましょう。

まず「送信可能化」するには「自動公衆送信し得るようにする」必要があります。また、「自動公衆送信」は「公衆送信のうち」特定要件を満たしたものとされているのですから、公衆送信の要件を満たしている必要があります。ここで「公衆送信」の定義を確認すると、「直接受信」と記載してプロバイダーを経由するようなものを排除している(上記の通り今はそう解釈します)のですから、「公衆送信のうち」として公衆送信の一種として定義されている「自動公衆送信」からもプロバイダーを経由するようなものが排除されることになります。
結果として、インターネットで著作権者の許可を経ずにファイルをアップロードしても「自動公衆送信」可能にしたことにはならず、送信可能化権を侵害していないことになります。

しかし実際には、インターネットで著作権者の許可を経ずにファイルをアップロードしたとして送信可能化権を侵害したとして逮捕・起訴される方は後を絶ちません。これらの方は不当逮捕されているので救うべきなのでしょうか?
そうではありません。そもそも法律改正の経緯からすると、インターネットで著作権者の許可を経ずにファイルをアップロードする行為を取り締まるための法改正が送信可能化権の部分の話ですから、単に「直接受信とは、プロバイダーを経由するようなものは含まない」との考えが誤っていると考えるのが順当ではないでしょうかね。

私としては上記ブログの記事は訂正は必要なく、「放送法改正でネットも「放送」に…そして、ニコ動やUstの業務停止も可能に?!」と題名と内容を元に戻して頂ければいいのではないかと考えます。
政府・総務省はこの案を通してから、「ネットも放送になりましたので業務停止を命じます」と態度を変える気なのでしょうか?ネットで選挙活動できると喜んでいる場合じゃないかもしれませんね。今後も、2010年3月閣議決定の「放送法等の一部を改正する法律案」の状況を注視していきたいと思います。

参考

なお、著作権法の上記に引用した部分は平成22年3月5日(金)の定例閣議にて閣議決定された「放送法等の一部を改正する法律案(参照:総務省の国会提出法案)」でも改正箇所はありません。
この「放送法等の一部を改正する法律案」では著作権法の改正もされ、そのほとんどは放送法の条文番号が変更されたことに伴って「○条×項」を「△条□項」に変更するような実質の内容に変更のない改正なのですが、著作権法99条の2(送信可能化権)については2項として「前項の規定は、放送を受信して自動公衆送信を行う者が法令の規定により行わなければならない自動公衆送信に係る送信可能化については、適用しない。」を追加するとしており、今回改正案作成時に著作権法の規定を精査していることがわかります。
このことから「直接受信」の用語の使用方法が、法律立案時の時代背景が異なることから著作権法と放送法で異なるという立場は取れないでしょう。それならば今回の改正案作成時に著作権法も見直しされているはずです。(もちろん、明文規定でそれぞれの法律中に異なる定義をすれば別の意味に使用可能ですが、今はそのようなことはされていません。)

本サイト内の参考記事:
インターネット接続に対して NHK受信契約を義務付けへ (2010/03/24の当サイト内の記事)

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