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NHK 受信料・受信契約に関する記事一覧

[NHK]

NHK受信料の支払い有無はNHKに意見できるかどうかとは関係がない / 2010-09-20 (月)

だいぶ前に、NHK受信料不払い者への法的措置について(当サイトの記事)のコメント欄で「NHKの受信料を払わないくせにNHKを批判している人がいるが、未払い者はNHKにとってお客様でなくて部外者です。NHKの運営に口出しする権利はないと思います。(大意)」と言ったコメントがありました。
それに対して私は、「受信料を払っていなくとも日本国民であればNHKの運営に口出しする権利はあると思います。なぜなら、NHKは放送法という日本国の法律によって作られた特殊法人だからです」と返事しました。つまり、会社法の規定を利用して日本国の意志に関わりないところで作られた一般の株式会社とは違い、NHKは日本国が国家として必要を認めて特に法律で規定した法人であるのだから、日本国の主権者である日本国民がNHKの運営に口出しできるのは当然であると言ったわけです。

つまり、上記コメント氏が一般企業に例えれば「金を払っていない以上客じゃないから文句を言うな」と言っているのに対して、私は一般企業に例えれば「客であるか否かにかかわらず、株主が会社の経営に文句言えるのは当たり前だろう?」と言っているわけです。
上記の例えで、私は国民を株主に例え、受信料を支払っている人を株主に例えていません。これは、経営委員の任免・予算承認等に国民から選ばれている国会議員が集まる国会の同意が必要であるからです。一方、受信料を支払っている人の集会やその代表者を集めた集会で予算を承認するとか、人事を決定するということはありませんから、受信料を払っている人を株主に例えるには無理があると考えました。

本論

以上は実は話の前置きで、今回の記事はここからが本論です。
以下の放送法の条文をご確認ください。

「放送法(昭和二十五年法律第百三十二号)」より(抜粋)

(経営委員会の権限等)
第十四条  経営委員会は、次に掲げる職務を行う。
 一  次に掲げる事項の議決
  イ 協会の経営に関する基本方針
  ロ 監査委員会の職務の執行のため必要なものとして総務省令で定める事項
  ハ 協会の業務の適正を確保するために必要なものとして次に掲げる体制の整備
   (1) 会長、副会長及び理事の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制
   (2) 会長、副会長及び理事の職務の執行に係る情報の保存及び管理に関する体制
   (3) 損失の危険の管理に関する体制
   (4) 会長、副会長及び理事の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制
   (5) 職員の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制
   (6) 協会及びその子会社から成る集団における業務の適正を確保するための体制
   (7) 経営委員会の事務局に関する体制
  ニ 収支予算、事業計画及び資金計画
  ホ 第三十八条第一項の業務報告書及び第四十条第一項に規定する財務諸表
  ヘ 放送局の設置計画並びに放送局の開設、休止及び廃止(経営委員会が軽微と認めたものを除く。)
  ト 委託国内放送業務及び委託協会国際放送業務の開始、休止及び廃止
  チ 番組基準及び放送番組の編集に関する基本計画
  リ 定款の変更
  ヌ 第三十二条の受信契約の条項及び受信料の免除の基準
  ル 放送債券の発行及び借入金の借入れ
  ヲ 土地の信託
  ワ 第九条第九項に規定する基準
  カ 第九条の二第二項及び第九条の三第一項に規定する基準
  ヨ 第十条第一項に規定する基準及び方法
  タ 第三十条の二に規定する給与等の支給の基準及び第三十条の三に規定する服務に関する準則
  レ 役員の報酬、退職金及び交際費(いかなる名目によるかを問わずこれに類するものを含む。)
  ソ 収支予算に基づき議決を必要とする事項
  ツ 重要な不動産の取得及び処分に関する基本事項
  ネ 外国放送事業者及び外国有線放送事業者並びにそれらの団体との協力に関する基本事項
  ナ 第九条第八項の総務大臣の認可を受けて行う協定の締結及び変更
  ラ 第九条第十項の総務大臣の認可を受けて行う業務
  ム 第九条の二の二の総務大臣の認可を受けて行う出資
  ウ 第四十七条第一項の総務大臣の認可を受けて行う放送設備の譲渡等
  ヰ 情報公開及び個人情報保護に係る審議を行うため協会が設置する組織の委員の委嘱
  ノ イからヰまでに掲げるもののほか、これらに類するものとして経営委員会が認めた事項
 二  役員の職務の執行の監督
2  経営委員会は、その職務の執行を委員に委任することができない。
3  経営委員会は、第一項に規定する権限の適正な行使に資するため、総務省令の定めるところにより、第三十二条第一項の規定により協会とその放送の受信についての契約をしなければならない者の意見を聴取するものとする。

「放送法」より引用

今日注目するのは、放送法14条3項です。ここでは「契約をしなければならない者の意見を聴取する」とされており、「契約をした者の意見を聴取する」とか「受信料支払い者の意見を聴取する」とはなっていません。
つまり、放送法では、NHKの経営委員会に対して受信契約の締結有無・受信料の支払い有無で区別せずに意見を聴取することが定められているわけです。

これは私が考えるところでは合理的な規定です。例えば、受信料不払いの一部には「番組内容の偏向」に対する抗議とかもあるようです。経営委員会がそのような者の意見を聴取した上で、より多くの者が納得できる番組作りができるような環境作りをすればこの方たちは支払ってくれるかもしれません。未契約者についても、その意見を聞いてより多くの方が納得できる受信契約にすれば、契約する人がいるかもしれません。
そのようなことを考えると、意見を聞く場から法律の規定で閉め出すのは得策ではないでしょう。

この条文は、「放送法等の一部を改正する法律(平成十九年法律第百三十六号)」にて追加されています。平成19年と言えば2007年のことですから、2005年に上記コメントをされた上記のコメント氏に対して上記の規定を持ち出すのは(コメントした時より未来のことですので)不適当でしょう。
しかし、2010年現在に「NHKの受信料を払わないくせにNHKを批判している人がいるが、未払い者・未契約者はNHKにとってお客様でなくて部外者です。NHKの運営に口出しする権利はないと思います。」と言われたら、「経営方針を決めるNHKの経営委員会が聴取すると法律で決められている人の意見を聞かなくていいとは何事だ」と言うことができるでしょう。

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[日記/2010/September]

さくらんぼ小学校問題に関する件 / 2010-09-11 (土)

ちょっと時流に乗り遅れている感もありますが、今日の話題は「さくらんぼ小学校」の件です。
山形県東根市に2011年4月に開校予定の東根市立小学校の名前をさくらんぼ小学校としたところ、同人でアダルトゲームを作成しているサークルの名前である「私立さくらんぼ小学校」とバッティングしているとしてニュースとなりました。

東根市側は9月9日付けで「市立さくらんぼ小学校」の名称を変更する予定としていますし、「私立さくらんぼ小学校」側も9月9日付で「先方様の学校のご意志が変わらぬようでございましたら、児童の安全を配慮し、サークル名の変更を視野に入れることも考慮しております。(子供や保護者の方々を不安にしてまで、名称を貫こうとは思っておりません)」としております。
これらのことから、今後どのように事態が進捗しても実在の学校名とアダルトゲーム作成をしているサークルの名称が一致したままとなることはないように思われます。

上記の話を聞いたときに、直感的に「同人サークルが小学校を名乗るのはまずかろう」と思ったものですが、法律的にはどのように考えるべきか気になりましたので調べてみました。

まず、「私立さくらんぼ小学校」は2002年以降名称を使い続けているようです。一方「市立さくらんぼ小学校」は2009年に学校の名称を決定したとのことですから、後から名称を被してきたのは東根市側となります。一般的に考えるならば、先に名乗っていた方が後から名乗る方に「同じ名前をつけられると混同されて迷惑だ」というのはありえるでしょうが、その逆は常識的に話として成り立ちにくいでしょう。

では、法律上の小学校でない団体が「小学校」と名乗るのに問題はないかです。私はこの点に違和感を持ちましたし、他にもそう考える方はいらっしゃると思います。
それでは学校教育法を確認してみましょう。

「学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)」より(抜粋)

第一条  この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする。

第百三十五条  専修学校、各種学校その他第一条に掲げるもの以外の教育施設は、同条に掲げる学校の名称又は大学院の名称を用いてはならない。
2  高等課程を置く専修学校以外の教育施設は高等専修学校の名称を、専門課程を置く専修学校以外の教育施設は専門学校の名称を、専修学校以外の教育施設は専修学校の名称を用いてはならない。

「学校教育法」より

学校教育法135条によれば、法律上で小学校として認められた以外の教育施設に「小学校」の名称を使用することはできません。逆に言えば教育施設ではない団体の名称に「小学校」が入っていても、学校教育法135条の条文上は問題ありません。

う~ん。これは法律の条文が悪いんじゃないのかなぁ。基本的には法律で「小学校」を名称中に使用できる団体を法律上小学校である団体に限っておいた方がよいように思います。
こう思うのには理由があって、例えば株式会社でない個人・団体が、その名称中に「株式会社」の名称を使用することは違法となっているのです。

「会社法(平成十七年法律第八十六号)」より(抜粋)

(商号)
第六条  会社は、その名称を商号とする。
2  会社は、株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社の種類に従い、それぞれその商号中に株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社という文字を用いなければならない。
3  会社は、その商号中に、他の種類の会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。

(会社と誤認させる名称等の使用の禁止)
第七条  会社でない者は、その名称又は商号中に、会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。

第八条  何人も、不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない。
2  前項の規定に違反する名称又は商号の使用によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある会社は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。

「会社法」より

上記の事から考えれば、法律上小学校でない団体に「小学校」を名乗らさないのは、混乱防止を考えると過剰ではない規制と考えます。(逆に言えば、今回のサークルさんが「私立さくらんぼ学園小学部」と言う名称でしたら、特に法律で要件を定めている小学校ではないですから、私は何ら問題点を感じなかったでしょう。)
名称を法規制すると、○○小学校PTA、○○小学校児童会などのように、小学校そのものと何らかの関係を持った団体の名称中に「小学校」が使用できなくなるおそれがあって、一律禁止も難しいのかな?とも考えたのですが、「○○小学校PTA」が小学校そのものではないことは明らかであると常識的に考えれば、上記の会社法に類似する規定にしておけば問題ないように思えるのですよ。

私としては、一般論としては法律の条文(学校教育法135条のあたり)を見直した方がよいのではないかと考えます。
個別の話としては、実在の児童やその保護者に迷惑のかからないようにしようとする点では両者とも同じ方向性のようですから、良い方向に解決するのではないかと考えています。

注意

本文書を書くに際し、特に専門書を調べたりはしておりません。法律の解釈に誤りのある可能性がありますので、ご了承願います。

変更点

2010年9月20日16時頃 追記

なぜ、『法律で「小学校」を名称中に使用できる団体を法律上小学校である団体に限っておいた方がよいように思』うのかについて、文中での説明が不足していたように思ったので、会社法を引用するなどしてその辺を追記した。

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