平成22年3月5日(金)の定例閣議にて閣議決定された「放送法等の一部を改正する法律案」が総務省の国会提出法案内に掲載されました。
正直改正箇所が多すぎてどこを見ればよいかわからない有様となっていますが、当サイトとしては一般の方に一番影響のあるNHK受信料関係の記載を見ていきます。
放送法の改正案として以下の記載があります。
2010年3月国会提出の「放送法等の一部を改正する法律案」より
(受信契約及び受信料)
第六十四条 協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であつて、テレビジョン放送及び多重放送に該当しないものをいう。第百二十六条第一項において同じ。)若しくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については、この限りでない。
2 協会は、あらかじめ、総務大臣の認可を受けた基準によるのでなければ、前項本文の規定により契約を締結した者から徴収する受信料を免除してはならない。
3 協会は、第一項の契約の条項については、あらかじめ、総務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
4 協会の放送を受信し、その内容に変更を加えないで同時にその再放送をする放送は、これを協会の放送とみなして前三項の規定を適用する。
2010年3月の「放送法等の一部を改正する法律案」の新旧対照条文より引用
注目すべきは2010年3月国会提出の「放送法等の一部を改正する法律案」第64条第4項でしょう。今回新たに加わった条文で、「協会の放送を受信し、その内容に変更を加えないで同時にその再放送をする放送は、これを協会の放送とみなして前三項の規定を適用する。」となっています。
もちろん、これに対応する条文が過去にあり、その記載をまとめただけなのであれば単なる技術的な条文修正になるでしょう。
そこで現在の放送法(及び関連法)を見ると、衛星放送・受信障害対策中継放送についてはNHKの放送ではないもののNHKの放送と見なす趣旨の記載があります。(衛星放送については、放送法第2条の2第2項2号にて「協会の放送(協会の委託により行われる受託国内放送を含む。第三十二条第一項本文において同じ。)」として規定されています。また、受信障害対策中継放送は、放送法第53条の9の3の規定により、NHKの放送を受信障害対策中継放送局が受信した上で再送信した放送は「協会の放送」とみなして、放送法第32条第1項の規定を適用することとされています。)
しかしながら、現在ケーブルテレビ(有線放送、または電気通信役務利用放送法を根拠とした有線役務利用放送)については放送法第32条第1項を準用する規定はないことから、ケーブルテレビについては2010年3月国会提出の「放送法等の一部を改正する法律案」第64条第4項が新設の規定となり、この規定を根拠にケーブルテレビ受信者はNHKと受信契約を締結する必要が出てくることになります。
これは重大な変更点であり、「放送法等の一部を改正する法律案」の概要に「ケーブルテレビ受信者は今回の法改正によりNHKと受信契約する必要が出てきます」と記載するべきと考えますが、実際には何も記載されていません。
ケーブルテレビ受信者は法律上受信契約を締結する義務がないにもかかわらず、NHKはその点を隠し、長年にわたりケーブルテレビ受信者をだまして根拠のない受信料を徴収してきました。
今回の放送法改正案はNHKが過去に行ってきた違法行為を何らの反省もなく単に追認するものであり、非常に遺憾ですね。本来であればこのような非常に多数の一般の方が影響する法改正については総務大臣自らが「今回の改正案でケーブルテレビ受信者がNHKと受信契約を締結する必要が出てきた理由」と「過去に違法に集金したNHK受信料の総額とその返還方法」を発表すべきと考えるのですがね。