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NHK 受信料・受信契約に関する記事一覧

[NHK]

日本放送協会経営委員会議事録より / 2010-04-03 (土)

(続)衛星セーフティネット参加者のNHK受信契約について

まずは以前書いた記事である衛星セーフティネット参加者のNHK受信契約についてに関する興味深い動きがありましたのでお知らせします。

書籍「放送法を読みとく」の記述によれば、以下の通りとなっています。(参考:当サイト内の「放送法を読みとく」紹介記事

受信料の対象は、NHKの放送を受信できる受信設備である。テレビのチューナー付きパソコンも受信料の対象となる。携帯電話のワンセグも、地上デジタルテレビジョン放送の1セグメントを利用した放送であり、その受信機は受信料の対象である。他方、2009年度から地上デジタルテレビ放送の放送衛星利用による難視聴解消(「衛星によるセーフティネット」)が始まる。NHKの地上テレビ(総合・教育)も放送されるが、実施主体は社団法人デジタル放送推進協会(Dpa)であり、NHKも民放も番組提供者(6条の再放送)に過ぎない。NHKの放送でない以上、衛星セーフティネットの受信者は特別契約による受信料しか払わなくてよいことになるが、特段の措置はとられていない。

放送法を読みとく 第3編Ⅱ 258-259ページより引用

ちなみに、「放送法を読みとく」の日本放送協会に関する第3編Ⅱは、NHK勤務時に主として放送制度を担当していた山本博史氏が執筆されています。(1950年生まれ。1975年に東京大学法学部を卒業してNHKに勤める。NHKでは主に放送制度を担当し、2005年に総合企画室業務主幹で退職した。2009年現在はメディア評論家、上智大学非常勤講師、専門はコミュニケーション制度論。)
なお、「放送法を読みとく」は、大阪大学大学院高等司法研究科の鈴木秀美教授、専修大学文学部の山田健太准教授、立教大学社会学部メディア社会学科の砂川浩慶准教授のお三方が編者として纏められたものになっております。

上記をまとめれば、「衛星セーフティネットはNHKの放送でないので、その受信者は特別契約による受信料しか払わなくてよいことになるが、特段の措置はとられていない。」と言ったところです。

これに対して、NHKのとった「特段の措置」は日本放送協会放送受信規約を一部変更することでした。これにより衛星セーフティネットの受信者に対しては「地上契約」の受信料を払うように規定しています。費用負担の政策的な妥当性については、そのような地域に住んでおらずNHKの経営者でもない私としてはあまり言うことはありませんが、法的にはなかなか疑問の残る解決策と考えます。
日本放送協会放送受信規約というのは「NHKの放送の受信についての契約」なのですから、少なくとも現行法上はNHKの放送でない社団法人デジタル放送推進協会の放送を受信可能となったことを理由に契約種別を変更する必要があると規定するのは不当でしょう。

日本放送協会第1114回経営委員会議事録によれば、大西理事は「本則の規定にしたがえば衛星契約になるところを地上契約とするということを規定しています。」などと言っていますが、本則に従えば特別契約で地上契約より安くなるようですよ?

CATVにおける受信契約の締結義務について

日本放送協会第1114回経営委員会議事録の中から、放送法等の一部を改正する法律案の概要について説明している今井経営企画局担当局長の発言より一部(ケーブルテレビ関連)を以下に引用します。

今井経営企画局担当局長
 また、受信契約の締結義務についての規定が追加されています。現行法は、NHKの放送を受信できる受信設備を設置した方に、NHKとの間で受信契約を締結する義務があることを法律に定めています。例えば、CATVがNHKの放送を再送信して、CATVでご覧になっている場合、どのように取り扱っているのかについては、直接的にはCATVの放送を受信しているとしても、間接的にはNHKの放送を受信できるわけですので、そのような方にも受信契約の締結義務があると解されています。その点、何ら変わりはありませんが、新放送法では、NHKの放送をそのまま同時に再送信する放送については、NHKの放送とみなすという規定を置き、この点を確認的に定めて明確にしています。

日本放送協会第1114回経営委員会議事録より引用

と記載されています。ただ、「そのような方にも受信契約の締結義務があると解されています」のような見解を有するのがNHK以外に誰がおられるのか非常に興味があります。

学者さんを見れば、筑波大学大学院 人文社会科学研究科 憲法学専攻の土屋英雄教授は「この解釈はさほど説得力がない。」として否定されています(参考:当サイト内の「NHK受信料は拒否できるのか」紹介記事)。
他の学者さんは賛否を公開することなく沈黙していますが、NHKの主張から考えると必須である、単に「受信」と規定されている場合は間接的に受信する場合も含まれるという解釈は、東京大学の塩野宏教授(1989年当時)の出版した「放送法制の課題(有斐閣)」の記載で否定されています(参考:ケーブルテレビと受信料に関するNHKの主張の誤り)。

それでは日本国政府の見解はと言えば、2005年にあった第162回国会の質問主意書第31号(日本放送協会の受信料未納問題等に関する質問主意書)が重要でしょうか。
松野信夫・衆議院議員(当時)が、上記質問主意書で「政府としては、こうした携帯電話、パソコンでのテレビ受像及び有線型のテレビ放送についても、利用者は放送法に基づいて日本放送協会との間に受信契約を締結して受信料を支払う義務があると考えているか。義務があるというのであれば、その根拠を明らかにされたい。」と質問しても、政府は答えないようにしています。この後2回再質問されたにもかかわらず答えをさけており、結果として日本国政府はケーブルテレビ受信者が受信契約の締結義務があるとする見解は示していません。(参考:トールの雑記帳 -「ケーブルテレビはNHK受信料の対象外」国も否定できず)。
もし、「CATVがNHKの放送を再送信して、CATVでご覧になっている場合、どのように取り扱っているのかについては、直接的にはCATVの放送を受信しているとしても、間接的にはNHKの放送を受信できるわけですので、そのような方にも受信契約の締結義務があると解されています。」と言うように日本国政府が解しているのであれば、日本国政府は答弁書にそのように記載したと思うのですが。

いったいNHK以外のどこの誰が現行法上ケーブルテレビでも受信契約の締結義務があると解しているのでしょうか。是非教えていただきたいものです。

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1: nonki (2010/04/04 19:39)
上記のように書いていますが、NHKがラジオの聴取料を集めていた時代に有線ラジオにおいて聴取料が取れるとした官僚の答弁はあります。(上記書いたときは忘れていました。自分で調べて過去に記事に書いたことなのにね。)
しかし、上記のように答弁した官僚のある方は、そもそも会社の設立・解散等について規律する商法等の改正にかかわった方でその分野(会社法)の書籍は数冊発刊しているのですが、放送法関連の書籍は出版されていません。また、別の官僚の方は放送技術に関する書籍を発刊しているが放送法関連の書籍は出版されていないなど、放送法関連の法律を十分理解して答弁していたかは疑わしいと思っています。

一方、上記に書いた 日本放送協会の受信料未納問題等に関する質問主意書 への答弁書は有線ラジオではなくケーブルテレビの話ですし、2005年と最近の話でもあります。また、事務手続き上内閣法制局も通ることから無茶な見解は出てこないと期待できます。
ここで「ケーブルテレビ受信者も受信契約の締結義務がある」との見解を示さなかったことから、現在の日本国政府はケーブルテレビ受信者に受信契約の締結義務があるとは表明していないことがわかります。
2: nonki (2010/04/10 21:36)
実は、NHK出身者でも「ケーブルテレビが再送信したNHKの番組について受信料を支払う必要がある」と言う見解を示した人はいらっしゃらないようです。
日本放送出版協会から発行されたNHK出身の方が書いた「新・放送概論―デジタル時代の制度をさぐる」にもそのような見解は示されていません。
また、「放送法を読みとく」内ではNHK出身の方が上記の通り「NHKの放送でない以上、衛星セーフティネットの受信者は特別契約による受信料しか払わなくてよいことになる」との記述は、ケーブルテレビの場合に当てはめればNHKの受信料を支払う必要がないと考えるほか無いことがわかります。

NHKの事務方は上記の通り経営委員会に正しい情報を提供せずに審議を求めているようですが、これは問題があるように思うのですが?
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