ここでは、はじめからケーブルテレビであり、法律上NHKと受信契約を締結する義務がないにも関わらずNHKと受信契約を「締結」した場合について検討します。
日本放送協会受信規約による「受信機」の定義
日本放送協会受信規約第1条第2項において、「受信機」は「家庭用受信機,携帯用受信機,自動車用受信機,共同受信用受信機等で,NHKのテレビジョン放送を受信することのできる受信設備をいう。」と定義されています。また、日本放送協会受信規約には「テレビジョン放送」の定義がありませんが、放送法第二条第二号の五によれば「放送」であることがわかりますので、結果として「テレビジョン放送」は「無線通信の送信」の一種であることがわかります。これらのことから、日本放送協会受信規約に定める受信機は、無線通信の送信を受信することのできる受信設備であることがわかります。
なお、日本放送協会受信規約で別途定義していない以上、法律の定義に基づいて用語が使われていると考えるのが適当でしょう。
つまり、ケーブルテレビ等の有線電気通信の送信を受信することのできる受信設備は、日本放送協会受信規約に定める受信機(無線通信の送信を受信することのできる受信設備)ではありません。
放送受信契約の成立日
日本放送協会受信規約(抜粋)
第4条 放送受信契約は,受信機の設置の日に成立するものとする。
日本放送協会受信規約第4条によれば、受信契約は「受信機の設置の日に成立する」とされています。
つまり、例え受信契約をNHKに申し込んだ後でも、受信機を設置していなければ契約は成立しておらず、受信料を払う必要はありません。
ケーブルテレビ等の有線電気通信の送信を受信することのできる受信設備のみを設置している場合は、日本放送協会受信規約に定める受信機を設置していないことになるので、契約未成立となります。
それにもかかわらず、NHKが受信料を取っていたとすれば、受信契約による根拠もなく「受信料」と称してお金を集めていたことになるので、NHKの不当利得に当たる疑いがあります。
例えば新興住宅街であるなど、地域全てがケーブルテレビに加入している場合においては、NHKがケーブルテレビに加入していて受信契約が成立しない(少なくともその可能性が非常に高い)ことを認識しつつ受信料を不正に集金していたと考えられるので、不当利得の返還請求は行いやすいと考えられます。
NHKに対しては、『契約未成立であるので以後の「受信料」は払わないこと』、『これまでに払った「受信料」を返還すること』などを要求すればいいでしょう。口座振替等をしている方はNHKが間違えて引き落としを行わないように、口座振替の廃止手続きも行っておきましょう。
もし、この後もNHKが契約は成立していると主張しても、その主張に理はありませんので、放置しておいてよいでしょう。不当利得の返還請求を行うかどうかについては各自でご判断ください。
なお、必要に応じて、民法第95条の錯誤による契約の無効を主張する、民法第96条の詐欺による契約の取り消しを主張するなども検討に値するでしょう。最近の契約であれば、消費者契約法の適用も検討できると思います。(NHKの番組、NHK公式サイト、集金人の言動から、法律上ケーブルテレビでも受信契約が義務づけられていると思っていたなどの主張があり得ます。)
追記
2006年10月15日
上記の『日本放送協会受信規約による「受信機」の定義』の細部を修正。
参考法令等
本文の記載内容には一定の注意を払っておりますが、万一誤りがあった場合でも責任は負いません。
放送法
有線テレビジョン放送法
日本放送協会受信規約