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[NHK]

NHKで法律違反といえば / 2009-05-24 (日)

本来は、明日こそ最速サンテレビを見よの後には、アニメ 涼宮ハルヒの憂鬱特集記事を載せる予定だったのですが、法律違反と自業自得 - 新世紀のビッグブラザーへ blogの記事に触発されてNHK関連に変更です。

放送法3条の2

前提として、放送法3条の2では国内放送の放送番組の編集に当たって「政治的に公平であること」「報道は事実をまげないですること」「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」などが求められています。
しかしながら、上記記事(法律違反と自業自得 - 新世紀のビッグブラザーへ blog)によれば一方的な視点で編集された番組が放映されたとして問題視され、意見広告の掲載に至ったようです。なお、放送法3条の2に反した場合どうなるかという問題ですが、電波法76条によれば無線局の運用の停止、登録の停止、免許の取消等を行うことができることになっています。

実際、過去には放送法3条の2に違反をしたと見られた東京の放送局に対して「放送局の免許を取り消せ」と主張しているデモもあったと記憶しています。しかし、「免許の取消等を行うことができることになっています」というのには理由があって、実際にそういう問題が起きたときに処分できるかと言えば難しいわけです。
まず、表現の自由に関係する憲法上の問題から放送法3条の2を訓示規定や倫理規定と解釈して、直接の処分の用件とはならないとする学者がそれなりの数いること。もう一つは、先の主張が原因の一部となりますが、実際に放送局に免許の停止処分をした場合にはよほどの原因がなければ野党は攻撃材料にするでしょうし、マスコミからも総攻撃を食らうなど政治的に大きな問題となることが予想されますから、「放送法3条の2に反する放送」が事実としてあった場合でも総務大臣は免許の取り消しまで踏み切ることは難しいでしょう。

放送法3条

さて、例えばNHK番組改変問題について放送法第三条の「放送番組は、法律に定める権限に基く場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。 」に違反して介入されたとする立場の人々がいます。(なお、放送法3条に反した場合にどうなるかという問題ですが、電波法76条によれば無線局の運用の停止、登録の停止、免許の取消等を行うことができることになっています。)
ただし、「このような立場の方々」は「介入したのは政権関係者」との立場ですから、当然総務大臣による免許の取り消し等は考えません。しかしNHKに自己の主張を反映させるのが難しいことは先の免許の停止を求めている人々と変わりません。

そこで、「このような立場の方々」から最近聞かれるのが「受信契約は双務契約であり、NHKは放送法にもとづいた放送をおこなう義務がある」との主張です。つまり、介入された放送がされればその分の受信料は払う義務がないとする主張です。
しかし、日本放送協会放送受信規約では、NHKは月の半分以上テレビジョン放送を送信しなかった場合に受信料を徴収しないとしているだけです。放送の有無については言及されていますが、その内容に関しては何ら言及がありません。例え、放送内容が放送法3条に反して政治介入された放送であろうが、放送法3条の2に反して政治的に公平でなかったり事実を曲げたり偏った視点からのみ編集された放送であろうが、日本放送協会放送受信規約の上では問題ない放送であると考えるべきでしょう。
私は、現在の「受信契約は双務契約であり、NHKは放送法にもとづいた放送をおこなう義務がある」との主張は、「発想に見るべき点はあるものの筋の悪い方法」と思っています。

受信契約

もし、私がNHKに放送法に従った放送をするようにしてほしいと思う受信設備設置者であれば、「受信契約を使う」と言う発想だけを借りて、受信契約を締結する前に日本放送協会放送受信規約に以下の条文が追加された契約を受信契約として締結することを求めます。(以下は一例です。詳細は検討する必要があるでしょう。)

(NHKの義務違反)
第12条の3 NHKが次の各号の1に該当するときは、所定の放送受信料を返金するほか、その2倍に相当する額を割増金として返金しなければならない。
 (1)受信契約の締結および放送受信料の集金について不正があったとき
 (2)放送内容について放送法に従っていない部分があると当該放送受信契約者が認定した場合
2 前項に定める所定の放送受信料とは、前項各号の問題点が発生した日以降、改善されるまで(放送内容については訂正放送を流すなどの方法で改善されたと当該放送受信契約者が認定するまで)の期間に相当する受信料とし、1月未満の期間は1月として計算する。

そもそも放送事業者は電波法や放送法を始めとする法令を守って放送を行っているはずです。その元来守っているはずの放送法を受信契約で守るように求めるだけの契約をNHKが認めないと言うことがあれば、それは「NHKは放送法を守りません」と言っているに等しいわけで納得できませんよねぇ。
また、2倍の割増金を払うのは、日本放送協会放送受信規約では放送受信契約者が義務違反をした場合に行われていることで、それをNHKにも敷衍しただけですから特に不当な規定とは言えないでしょう。

もちろん、NHKが上記の受信契約の締結を拒否すれば受信契約は締結できないことになります。これは、NHKは締結する受信契約の内容については総務大臣の許可を要するものの、受信設備設置者と受信契約を締結する義務がない[1]ことによります。

このとき、受信設備設置者は受信契約の内容に関しては法律上全く制限されていない[2]ことと、民法により両者の意志が一致しなければ契約は成立しないことから、結果として受信契約は締結されないことになります。後は、契約の自由に関係する憲法上の問題から放送法32条を訓示規定や倫理規定と解釈することも可能かもしれませんが、その辺は私詳しくないのでふれません。

もしこの状況が不都合で、このように意見がまとまらない場合でも受信契約を締結させる必要があると国が考えていたのであれば、受信設備の設置者が裁判所に申し立てると裁判所がそれぞれの事情を勘案してふさわしい契約を認定し、強制的にNHKとの契約関係を成立させるような法制度を考えていたでしょうが、現在のところそのような制度はありません。

NHKで法律違反といえば(私見)

NHKで法律違反と言われたときにすぐに浮かんだのが以下事項です。放送内容とは関係ないかもしれませんが、早急に是正する必要はあると思いますがどうなんでしょうかね。

・池田信夫氏などが言われていた放送法9条9項違反(B-CASをつけない放送受信用機器を排除しようとしている)

・「放送法違反」といえるかは微妙ですが法律違反になるネタとしては、有線放送(ケーブルテレビ・CATV)受信者は受信契約を締結する義務がないのに偽った説明をして受信契約を集めている[3]として「ケーブルテレビ2000万世帯をだます日本最大の詐欺集団」として訴えていくのも良いでしょう。
ケーブルテレビから受信料を取っているのは、ラジオの聴取料があった時代に有線ラジオにおいて官僚の答弁で聴取料が取れるとした答弁があるからですが、これは大学教授などの学者は誰も認めていない(少なくとも今現在の私は、有線放送についても受信契約を締結する必要があることを認めた書籍を発見していない)ことからわかるように、誠にうさんくさい話なのです。
答弁した官僚自身が書籍を発刊しているのですが、会社法関係の書籍は数冊出しているが放送法関連の書籍はないとか、放送技術に関する書籍のみ発刊しているとかで、そもそも放送法関連の法律を十分理解して答弁していたかどうかから疑わなければならない有様です。
では、放送法をわかっている方はと見れば、国会審議でも参考にされる「放送法制の課題」にはそもそも有線放送を受信する受信設備設置者が受信契約を締結する義務があるかどうかについては記載されていません。日本放送出版協会から発行されたNHK出身の方が書いた「新・放送概論―デジタル時代の制度をさぐる」にすら有線放送を受信する受信設備設置者が受信契約を締結する義務があるかどうかについては記載されていないのですから徹底しています。一方、筑波大学大学院 人文社会科学研究科 憲法学専攻の教授が書いた、「NHK受信料は拒否できるのか」では、ケーブルテレビ加入者から受信料は取れないとしています。

注釈

[1]少なくとも現行法上は、受信設備設置者がNHKの言う日本放送協会放送受信規約に基づく契約を申し込んでも受信契約を結べない可能性がありますし、実際に受信契約の締結を受信設備設置者(又は関係者)が求めているにもかかわらず、NHKが締結しなかったこともあります。
テレビ番組録画サービス「録画ネット」を巡る法的議論 によれば、

実際、春日氏(録画ネット運営元の有限会社エフエービジョン顧問弁護士:引用者注)によれば、放送局側が仮処分申請を行なう前(2003年10月ごろ)から受信料の支払いなどについてNHKと交渉を行なっていたが、当初はほとんど放置状態だったという。しかし、2004年6月になって急に「アテネ(五輪)が始まるから困る」とNHKから連絡があり、その後間もなくサービス停止を求める内容証明郵便が送られてきたという。

NHKに受信機器設置者と受信契約を締結する義務があるのであれば、このような場合にも受信契約を断ることはできないはずです。なぜなら録画ネットのサービスが著作権法違反であろうとも、受信設備が設置されていることには違いないからです。
実際はNHKには受信機器設置者と受信契約を締結する義務がないので、NHKは著作権法違反の訴訟のみを行い、受信契約の締結は行わなかったわけです。

[2]受信契約の内容に関して総務大臣の許可を要するのはNHKだけです。
つまり、NHKが当該の受信設備設置者とどうしても契約を結ぶ意志があれば、受信設備設置者の提案した受信契約をNHKから法務大臣に認可申請して許可をもらえばよいのです。

[3]要するには放送法32条は有線放送には適応されないと言うことです。当サイト内の以下記事を参照願います。
 ケーブルテレビとNHK受信料
 ケーブルテレビと受信料に関するNHKの主張の誤り(上記記事の説明を補完しています)
 マンションにおけるNHK受信契約・受信料について
 NHK受信料は拒否できるのか(書籍紹介の記事)

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