さて、宗教法人「幸福の科学」を母体とする幸福実現党が、「新・日本国憲法試案」Q&Aを出してきました。新・日本国憲法試案(幸福実現党公式サイト)の最後の方に、PDFへのリンクがあります。
さて、私は、幸福実現党が日本国の憲法草案を出してきましたの記事で、「新・日本国憲法試案」が公開された日の昼に「この憲法案では大統領就任後に大統領の任期を終身にする大統領令(この憲法上は法律)を出せば任期が終身になりますよね。」と記載していたので、Q&Aと見比べて内容を確認したいと思います。
まず、その「新・日本国憲法試案」Q&Aの一部を以下に引用します。
幸福実現党公式サイトで公開されている「qa_v2_const_jp.pdf」より一部引用「新・日本国憲法試案」Q&A
2009/06/28
第三条、第四条、第七条(大統領制)、第十四条(天皇制)について
Q 「新・日本国憲法試案」が採用する大統領制は、大統領の権限が大きすぎて、独裁制に結びつくものではありませんか?
A そのようなことはありません。幸福実現党が試案として考える大統領制は、国会と大統領の意見が対立したときに、大統領がより大きな権限をもつことで、両者の調整を図る仕組みとして構想されています。しかし、”立法も行政もすべて大統領が握ることができる試案だ”などというのは、はなはだしい誤解です。
というのも、試案における「国会による法律」と「大統領令」とは明確に別の法形式として構想されています。(第十六条)。したがって、「大統領の選出法及び任期は、法律によってこれを定める」(第三条)、「国会の定員及び任期、構成は、法律に委ねられる」(第六条)との条文案は、「大統領の選出法と任期」、「国会の定員及び任期、構成」を「法律」で定めることにしており、大統領令では定められないものです。
これを、大統領令と法律を同じものととらえることで、”大統領令で、大統領の任期を終身としたり、憲法上の機関である「国会」をなくしてしまうことができる”というのは、単なる誤解です。そのようなことができる仕組みとしては構想されていません。
「国会」は、憲法上定められた機関ですから、憲法の下位法令である大統領令でこれを廃止することはできません。廃止のためには憲法改正が必要ですが、大統領令で憲法改正はできません(第十五条)。幸福実現党は、自由主義を基調としており、民主主義の原理をきわめて重要なものとして考えています。司法(裁判所)、行政(大統領制)、立法(国会)の三権分立の仕組みで、国民の人権が尊重され、国防がなされ、国家が運営されることを考えているのです。
幸福実現党は、「国会による法律」と「大統領令」は別の法形式と言っていますが、「法律」に「国会による法律」以外のものがないのであれば、わざわざ「国会による法律」と書く理由はありません。
逆に他の部分にあわせて「国会による法律」と書いてもよいはずの第三条は単に「法律」とだけ記載されています。
つまり、条文の「法律」と「国会による法律」の使い分けには意味があると考えるのが合理的です。また、「大統領令以外の法律は、国民によって選ばれた国会議員によって構成される国会が制定する」(第六条)とあり、「大統領令以外の法律」との表記が大統領令も法律であることを示しています。大統領令が法律でないのならば、大統領令を除外する記述がされるはずがありません。
ちなみに、こんなに重要な第六条の「大統領令以外の法律」の解釈については、「新・日本国憲法試案」Q&Aには記載されていません。これこそ答えるべき必要があると思うのですがね。
ですから、「新・日本国憲法試案」が施行されれば、大統領は「大統領による法律」である大統領令で大統領の選出法・任期を自由に決めることができます。当然ですが大統領の任期を終身にすることも可能です。
ちなみに「大統領による法律」である大統領令でも国会を廃止することはできません。そんなことは、「新・日本国憲法試案」Q&Aに言われなくても当然です。でも、「大統領令と国会による法律が矛盾した場合は、最高裁長官がこれを仲介する。二週間以内に結論が出ない場合は、大統領令が優先する。」(第七条)ですから、別に国会を廃止する必要はないのです。大統領が「国会による法律」を気に入らないときは、「大統領による法律」である大統領令で「国会による法律」を改正すればいいのですからね。
幸福実現党は、『”立法も行政もすべて大統領が握ることができる試案だ”などというのは、はなはだしい誤解です。』、『大統領令と法律を同じものととらえることで、”大統領令で、大統領の任期を終身としたり、憲法上の機関である「国会」をなくしてしまうことができる”というのは、単なる誤解です。』と言っています。しかし、日本語を普通に読めば「大統領令で大統領の任期を終身とする」ことは可能ですし、「国会を形骸化すること」も可能です。
その解釈が真意でないのなら、幸福実現党はそのように解釈されないように憲法試案を作り直して公表すべきでしょう。